株式会社LIXIL(以下 LIXIL)は、この度、当社の環境戦略の更新を行いました。LIXILの環境戦略は、「気候変動対策を通じた緩和と適応」、「水の持続可能性を追求」、「資源の循環利用を促進」という3つの重点領域から構成されていますが、各領域において、当社の事業プロセスとバリューチェーン、さらには既存事業の枠を超えて地球環境および社会に対するインパクト(良い影響)を拡大することを目指して、中期目標を策定し、取り組みを進めていきます。
当社は、環境リスクの軽減や適応に加え、自社の専門性を活かすことで、自社のバリューチェーンだけにとどまることなく、現在そして次世代の人びとの暮らしに変化を生み出すことを目指します。
LIXILでは、自社だけでなく、ビジネスパートナーとの連携を通じて、持続可能な事業運営を行うための取り組みを強化してきました。こうした活動が評価され、この度、SBTi(Science-based Targets initiative)の創設パートナーの一つである国際的な非営利団体CDPの「CDP サプライヤー・エンゲージメント評価」において、最高評価の「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー・ボード」に3年連続で選定されたのに加え、水資源管理に関する活動についても、「CDP ウォーターセキュリティ A リスト企業」に選ばれています。
気候変動対策を通じた緩和と適応
建物は世界のエネルギー関連CO2排出量の約28%、住宅部⾨だけでも17%を占めていることから、住宅の高性能化・省エネ化が喫緊の課題となっています1。
LIXILのScope 1~3の目標は、温暖化による世界の気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑えるSBTiの新基準に合致しており、この度、認定も更新しました。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言をふまえ、2022年6月に発表した通り、CO2削減目標を上方修正し、2019年3月期を基準として、2031年3月期までにScope 1および2については従来の30%²から50.4%の削減、Scope 3については15%²から30%削減という高い目標を掲げています2,3。
日本では、一般家庭で消費されるエネルギーのうち、暖房、冷房、給湯が約6割を占めています4。また、日本の既存住宅の9割は、政府が定める現行の省エネ基準を満たしておらず5、日本政府も主要施策の一つとして、断熱による住宅の省エネルギー性能の向上を推進しています。
LIXILでは、Scope 1~3のCO2削減目標に加えて、この度2026年3月期までに新築戸建住宅向け高性能窓の販売比率100%、2031年3月期までには、節湯・節水型の水栓やトイレの国内における販売構成比も100%とする目標を設定し、取り組みを強化しています。
高性能窓やドア、高性能住宅工法、節湯・節水型の水栓やトイレをはじめとする当社の環境配慮型製品のラインアップを拡充し、成長するリフォーム市場のニーズに対応すると同時に、エネルギー消費量の削減に貢献しています。加えて、気候変動による気温上昇や雨量の増加などにも対応できるよう、シェードやシャッター、雨戸といった製品の提供を通じて、気候変動の影響への適応をサポートしています。当社では、省エネ技術の開発を引き続き推進し、高断熱窓や省エネ型住宅設備への切り替えを促進することで、環境負荷低減につなげます。
水の持続可能性を追求
世界では、2050年までに人口の40%が深刻な水不足に直面すると推定されています6。LIXILは、水まわり技術の分野で世界をリードするメーカーとして、次世代が受け継ぐ水の持続性を追求し、誰もが安全でおいしい水にアクセスできるよう取り組みを加速しています。水の持続性の確保は、社会と環境への影響の両面から取り組む必要があり、LIXILでは新たな目標の設定を通じて、水の使用量削減、水の再利用や浄水技術の利用拡大、アクセス向上を推進していきます。
2031年3月期までに、自社の事業プロセスにおける水の使用効率を、2019年を基準年として20%改善するとともに、自然関連情報開示タスクフォース(TNFD)が示す生物多様性の確保の観点から、水不足拠点における水使用量の削減に取り組みます。生産拠点における水使用の最適化と責任ある水の使用を推進し、生産活動に必要とされる水の循環利用を進めることで、水使用量の削減を図ります。
また、当社は、水の効率的な利用を促進する製品やソリューションの提供を通じて、エンドユーザーの責任ある水利用をサポートし、日常生活における節水につなげていきます。節水型トイレや水栓、スマートコントローラーなどの製品の提供を通じて、2025年3月期までに、世界で年間20億㎥の水使用量の削減に貢献することを目指します。
より良い住まいには、シャワーや手洗い、飲料水など、清潔で安全な水が不可欠です。LIXILは、製品の提供だけにとどまらず、消費者や地域社会と連携することで行動変容を促し、より安全な水の提供と水の汚染リスクの低減にも取り組んでいます。当社は社会や環境に対するインパクト拡大に向けて、従来から、イノベーションの創出とパートナーとの連携による活動を展開してきた実績があります。パートナーとの協働を通じて、地域や文化によって異なる課題に対応するソリューションを開発し、より効率的で責任ある水利用を促進するため、水不足への対応、使用効率の改善、安全性の向上、再利用の促進といった様々な水の課題に関する議論を活性化し、政策提言を行っています。
LIXILは、このような包括的アプローチを通じて、より安全な水と水のサービスへのアクセス向上と、浄水技術により水質を高めたおいしい水の提供によって、インパクト拡大を目指します。
資源の循環利用を促進
世界の人口増加に伴い、世界の資源消費量は2050年までに倍増すると予想されています7。現在、建設関連部門では、世界の採掘資源の半分近くを消費していると言われています。持続可能な成長のためには、資源利用の効率化と循環型ソリューションの開発が不可欠であり、LIXILは、資源の循環利用の促進に取り組むことで、業界をけん引し、世界に貢献する目標を掲げています。
自社の事業プロセスに関しては、2026年3月期までに、事業所から排出される廃棄物のリサイクル率を世界全体で90%まで高める目標を掲げています。バリューチェーンについても、全社において使い捨てプラスチック包装の削減、資源配慮型製品の拡充、再製品化を実現するための引き取りサービスや、修理、再販、リースサービスなど循環利用を促すシステムの構築に取り組みます。従来のプロセスを見直すことで、再利用やリサイクルを促進し、廃棄物の発生を最小限に抑えることを目指します。
また、当社では長年にわたって、さまざまな原材料の効率的な利用を追求し、イノベーションの創出につなげてきました。LIXILが展開するGROHEブランドでは、資源の有効活用を促進する「Cradle to Cradle」認証製品を拡充しており、さらに環境製品宣言(EPD)に対応した製品は、18商品群、777品目に達しています。一方、国内市場では、2022年12月に、原材料にリサイクルアルミニウムを70%使用し、「エコリーフ環境ラベル」を取得した低炭素型アルミ形材「PremiAL」シリーズを発売しました。当社は、20年以上にわたってリサイクル材の分野で業界をリードしてきており、「PremiAL」に代表されるように、ハウジング事業で使用されるアルミ形材について、2031年3月期までにリサイクルアルミニウムを100%使用するという新たな中期目標を設定しています。
世界では、排出されるプラスチックの廃棄量が過去20年間で2倍以上に増加する中、LIXILでは、こうした課題に対応し、廃プラスチックの再利用を促進する循環型素材「レビア」を提供しています。プラスチック廃棄物の多くは、使い捨てのプラスチックが占めており、世界的に緊急性の高い、深刻な環境問題となっています。当社では、調達から生産、販売、施工、回収に至るエコシステムを構築することで、廃プラスチックの循環利用を促す持続可能なビジネスモデルを確立し、廃棄物とCO2排出量の削減、土壌や水、社会全体に有害な廃プラスチックによる汚染の低減に取り組みます。
LIXILのChief Technology Officer 兼 環境戦略委員会委員長である迎宇宙は、次のように述べています。「LIXILでは、Scope1~3への対応を含む気候変動対策によるCO2排出量の削減、私たちの生活に欠かせない水の持続性の確保、限りある資源の循環利用の促進という重点領域に注力した活動を継続的に展開してきました。今回の環境戦略の更新は、企業としての責任を果たすことはもちろんのこと、さまざまなステークホルダーとの連携を通じて、既存事業の枠を超えてインパクトの拡大を目指すものです。さらに、生物多様性の保全を当社の重要課題として追加し、取り組みを強化していきます。私たちは、世界で深刻化する環境の課題に対応するだけでなく、新たな価値を生み出すことで、地球環境の未来に貢献してまいります。」
¹ Global Alliance for Buildings and Construction, 2022 Global Status Report for Buildings and Construction (https://globalabc.org/our-work/tracking-progress-global-status-report)
² 温室効果ガス削減目標(Near-term)として、SBTiの認定を受けた目標
³ Scope 3の目標は、世界の気温上昇を産業⾰命前より2℃を⼗分に下回る温室効果ガス排出削減目標であるSBTiのwell-below 2℃水準に合わせて設定
⁴ 資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)」(https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2022/pdf/whitepaper2022_all.pdf)
⁵ 国土交通省2019年社会資本整備審議会資料より
⁶ OECD Environmental Outlook to 2050: The Consequences of Inaction - Key Facts and Figures
(https://www.oecd.org/env/indicators-modelling-outlooks/oecdenvironmentaloutlookto2050theconsequencesofinaction-keyfactsandfigures.htm)
⁷ United Nations Environment Programme, With resource use expected to double by 2050, better natural resource use essential for a pollution-free planet (https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/resource-use-expected-double-2050-better-natural-resource-use)