株式会社LIXIL（以下 LIXIL）は、地場工務店の匠が手掛けた断熱リノベの実例集『断熱リノベの匠』を展開いたします。そしてこの度、第２弾としてSW（スーパーウォール）工法リフォーム加盟店の株式会社近藤建設興業（代表取締役 近藤 直岐）が手掛けた、築56年の家をフルリノベーションした事例を公開しましたので、お知らせします。
岡山・吉備高原の南部、旧御津郡の大工工務店として1971年に創業した「近藤建設興業」。1997年に事業継承を行いのちに移転。高性能住宅の黎明期から環境にやさしく暮らし心地のよい住まいづくりに情熱を傾けてきた、そんな匠（たくみ）が代表取締役 近藤 直岐 氏だ。
近藤氏は、建てる地の自然の力を利用したパッシブ設計に高気密・高断熱・高耐震を施した認定長期優良住宅「おかやまニュートラルパッシブ」を提唱。太陽光発電を利用したZEHにも積極的に取り組んできた。
こうした設計・技術力を既存住宅のリノベにも活かすことができれば、新しい選択肢になると考え、築56年の空き家を買取りZEH仕様にフルリノベーション。「リニュートラボ ZEH_リノベ実験室」と名付け、体験型イベントハウスをつくった。こうした新たな取り組みは、体感してもらうのが一番という想いから、岡山市から依頼があったという宿泊体験をはじめ、地域のコミュニティにも役立つ場として活用していく計画だ。
代表取締役 近藤 直岐 氏
太陽や風など自然の力を活用し、快適に環境負荷を軽減するパッシブ設計は、断熱をデザインすること。岡山の地で最適解を導き出せるのは地元をよく知るビルダーだからできること。カーボンニュートラルの実現には、新築のみならず既存住宅のZEH化によるCO₂削減が欠かせないと近藤氏は考えている。
近藤氏にこの建物のコンセプトをたずねてみると「シン・昭和の家」とのこと。「原点回帰というか、最近はいろいろ贅沢になりすぎたという想いもあって、つつましい家がいいなと…」元の家の柱や梁をできるだけ活かし、床も天井も建具も地元の木材を使い、壁面は塗り壁で仕上げたそうだ。
また、岡山・津山発の家具ブランドの逸品まで展示されており、まさに地産地消の家といえるほど地元愛にあふれている。
長年空き家になっていた築56年の旧家屋 新築のように蘇った「リニュートラボ」
一部を持ち上げた屋根）の高窓から光を採り入れ、
蓄熱効果のある壁で太陽熱を蓄え、冬は夜間に放熱、
夏は室温の上昇を抑えるパッシブ設計が活かされている。
古材を見えるようにしたのは、みなさんに体感してもらうための家なので、リノベ感が伝わるようにとの狙いもあるそうだが、よく見ると継ぎ手や墨を打った跡など昔の大工の技が残る。そこに光を当てたのは先人へのリスペクトだと近藤氏は語る。
築56年の老朽化した家屋だけあって、完成に至るまでには苦労が多かったようだ。基礎に鉄筋が入っていなかったり、柱の断面欠損が大きかったりする中で、しっかり耐震性を確保しなければならないた
め、十分なケアが必要だったという。
「シン・昭和の家」らしい居室スペース。 水まわりも桧などの天然木仕上げで、清潔感にあふれ
畳敷きではないものの、和空間のような凛とした佇まい。 リラックスできる空間に。プライバシーを保ちながら
障子、地窓からのやわらかな光に心和み、癒される。 光や景色が楽しめるよう窓にも工夫が。
もちろん、新築の高性能住宅レベルの居住性能を得るための断熱性の向上は必須だ。壁や天井に「スーパーウォールパネル」を入れ、サッシは樹脂とアルミのハイブリッド窓「TW」を採用するなど、LIXILの「まるごと断熱リフォーム」によって既存住宅のZEH化を可能にした。
リノベでも高断熱が実現できる建材や工法のサポートがあるからこそ、新築のみならず既存住宅にも積極的に取り組もうという気持ちになれたと語る近藤氏。
実家や中古住宅の活用で、社会的な課題である空き家問題を解決する一歩になればという想いを胸に、ZEHリノベ普及への挑戦は、まだ始まったばかりだ。
築56年の平屋をフルリノベーションで間取りも一新。木造軸組パネル工法をベースに「まるごと断熱リフォーム」を利用し、高気密・高断熱、ZEH化をはかり、リノベによる高性能住宅として蘇った。工事期間はおよそ5ヶ月。
1F 吹き抜け部分
Reform Data
床面積：延床 25.6坪 1階 ／木造平屋建／築年数:1967年竣工・築56年／エリア:岡山県
断熱リフォームによる性能改善：省エネ区分 6地域
改修前3.88W/㎡K→改修後0.31W/㎡K