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DESIGNART出展「無為に斑 - 空間構成要素の再構築 -」に込めた、デザイナーたちの新たな挑戦と想い

作成者: LIXIL|2025年11月05日

株式会社LIXIL(以下LIXIL)は、2025年10月31日~11月9日の期間に開催されるDESIGNART TOKYO 2025において、インスタレーション展示「無為に斑 - 空間構成要素の再構築 -」を出展しています。この展示では、LIXILの強みであり、パブリックイメージでもある住宅設備機器・建材の枠組みから飛び出し、”空間”に対する既成概念を超えて新たな可能性を探索する取り組みです。

「無為に斑」プロジェクトに関わったLIXIL従業員に話を聞きながら、展示やプロジェクトにかける想いをご紹介します。


――「無為に斑」について教えてください。

井上:一般的に「無為」とは 自然のままで作為的でないことを、 「斑」とは 様々な色が入り混じっていることをそれぞれ意味します。これまで私たちが進めてきた考え方を「無為」とあてはめた時、「斑」という概念によって新しい考え方や手段を導入することで、これまでの枠にとらわれないさまざまな可能性が生まれるのではないか。そんな想いから始まったプロジェクトです。


――いつ頃から始まったプロジェクトなのでしょうか。

井上:今の「無為に斑」プロジェクトは昨年末から再始動したものですが、実はもともとコロナ前から始まったものでした。ただ、始まった当時はデザイナーがもっと自由にデザインし、商品やノベルティを配ったり社内コンペをしたりしようという小規模なものでしたね。コロナ禍に入ったことで、ものを作ったとしても配れない状態になってしまい、一度うやむやになってしまったものを、コロナ禍後に再始動させたものが今回のプロジェクトになります。

――どういった背景から再度立ち上げられたのですか。

井上:コロナ禍前に立ち上げた当初から、インハウスデザイナーの持つデザイン力をもっと活かしたいという想いが背景にありました。特に建材は、使用する素材がある程度決まっており、形状も直線基調が多く、自由度が低いという特徴があります。結果、デザイナーの能力が一方向に固まってしまうのではという懸念が個人的にありましたし、デザイナーたちからも「もっといろいろなことをやりたい」という話を聞いていたのです。

こうした想いは再始動の前後で変わりません。ただ、今回のプロジェクトは以前よりも枠組みが広くなりました。デザインの力で何かをしたいというところから広げ、LIXILとしていろいろなことができるということをもっと対外的にもアピールしていきたいという想いが強まってきたためです。そのため、デザイナーが普段の建材とは異なるプロダクトを作りたいという小さな話ではなく、真のブランドとしてエンドユーザーの方が求める価値にアプローチできることをアピールするという大きな目的を持ったプロジェクトになりました。こうした想いが、今回行われるDESIGNARTでの展示につながったのだと思っています。


脇坂:コロナ前の段階では、LIXILが強みとするアルミで何か新しい素材を混ぜてモノづくりをすることにこだわっていました。しかし再開してからは、具体的なプロダクトから概念的なアプローチにシフトし、空間や役割などへの固定概念に対し、斑を加えることで進化させられるのではというテーマを設けたところからスタートしました。再始動当初はプロダクトのアイデア出しからはじめましたが、アルミに限定せず、天井、床、壁といった空間構成要素に焦点を当て、それぞれの固定概念を打ち破るような製品開発を進めました。


――3つの要素に焦点を当てた理由は何ですか。

脇坂:「空間」について考えたときに、その重要な構成要素は、床、壁、天井だと考えました。たとえば3つの要素のうち床だけに絞ると、床のみを考えている会社に見えてしまいます。LIXILが空間全体のあり方への新提案ができる会社であることを伝えたいため、あえて3つの要素に焦点を当てることにしました。

再始動時は、「LIXILが長年培ってきた技術や経験を活かした家具を作ろう」という話があったんです。しかし、アップデートした考え方を伝えていくには、もっと大きな概念のほうが良いのではないかと考え、「空間構成要素」という概念を扱うことにしました。


空間の構成要素を再定義し、今までにないプロダクトを提案

――それぞれのプロダクトについてご紹介ください。

脇坂:今回のプロジェクトでは、全員で各プロダクトの検討をしてきましたが、壁と天井は市川、床は渡邉にリードしてもらい制作を行いました。いずれも、それぞれが空間に対してどういう役割を担っているものなのかを再構築したうえで、デザインを考えています。


市川:壁については、その本質が空間を「区切る」ことにあると考え、「境界が可変することで人やモノのつながりをゆるやかに調整する」ものを作りました。LIXILの既存商品では、壁は完全に遮断するものとなっていました。この既成概念を取っ払って新しい壁とは何かを考えた際、「抜けのある壁があってもいいのでは」というアイデアが生まれ、具現化した形です。
アルミ押出材の断面形状を直線ではなく曲線に仕上げており、ゆるやかに空間を仕切っています。LIXILが長年培ってきたアルミ押出成型技術によってこの表現が可能となりました。またその素材には、業界内でも最高レベルであるリサイクルアルミ技術を駆使して、製造時のCO₂排出量を大幅に削減できる循環型低炭素アルミ「PremiAL」を使用し、自然の光や風を取り込むことのできる壁として、新たな価値を生み出せるのではないかと考えています。


脇坂:天井については「構造体を覆う役割」が本質であると考えました。面ではなく線で天井を構成することで、空間を広く感じさせる錯覚を与え、木漏れ日が空間に散るギミックを加えられるといったアイデアのもと、プロダクトを作りました。
アルミの塗装技術を活用することでプロダクトの部位によって表面の質感を変えています。上部は光を反射させる光沢のある電着塗装処理をおこない空間に光と陰影を与え、下部は壁や天井に調和するように粉体塗装処理でマットな仕上げにしています。

渡邉:床の本質とは何かを考えたときに、私たちが行き着いたのは「人やモノを支えること」です。この「支える」にフォーカスすることで、これまでとは違う存在の床をご提案できるのではと考えました。

そこで作ったのが、小さな面を集め、積み重ねた床です。「支える」にフォーカスしたことで、細いものを積み上げたものも床といえるのではないかと考えました。見方によっては椅子にも見えますし、テーブルにも棚にも見える。そんな床を提案しています。素材として、自然由来の素材を意匠として活用している「textone」を使用しました。燻炭や鉱石などの自然素材がもたらす素朴な風合いとマットな質感が、ナチュラルな雰囲気を演出し、空間に調和します。


脇坂:床の本質について深く考えすぎて、「線一本でも床なのではないか」など、飛んだアイデアを話していたこともありましたよね。

渡邉:ええ(笑)。「果たしてこれは床なのか?」「これは床過ぎるのではないか?」とチームで議論を繰り返しました。今回取り組んでみて、担当者としては既存の床である平らな床が便利ではあるものの、一方で平らであることが不自由さにつながっているのではないかという発想が生まれました。議論を重ねたことで、いい塩梅のアイデアにたどり着けたのではないかと思っています。

脇坂:今回展示するインスタレーションはLIXILが実際に製品化している環境配慮素材で構成されており、 それらは環境負荷の低減という機能を超え、感性的な美しさをも創造する重要な役割を担っています。素材の可能性の探求も同時並行でおこなってきました。

――できあがったプロダクトは、DESIGNART本会場で展示されます。松尾さんは展示会の空間づくりを担われていらっしゃいますが、どういった点を意識されましたか?

松尾:LIXILの既存イメージである「建材メーカー」を新しく、柔らかく変えるプロジェクトを後押しできる空間デザインを意識しました。壁面にファブリックを使うなど、柔らかさを打ち出せるよう、素材選びにも可能な範囲でこだわりました。
決して大きな会場ではなく、制約もあるため、難しい部分もありましたが、できるだけベストなものをと考えてデザインをしました。


――展示会では、ノベルティも配布されます。ノベルティ制作について、吉田さんにもお話を伺いたいです。

吉田:箸置き、トレイの2種類のノベルティを作りました。どういったものが良いのかを考え、LIXILのデザイン、技術力、生産性の高さを持ち帰っていただけるものをということで、2種類のノベルティにそれぞれ役割を持たせています。

箸置きは「形」に、トレイは「素材」に触れていただけます。箸置きもトレイも、普段は住宅設備に使われている無機質な素材ですが、日常生活で使えるものに落とし込むことで、建材に関心を持っていただけるきっかけにできるのではないかと思っています。




ブランドとしての進化を目指して


――あらためて、今後の展望をお聞かせください。

ブランドとしての進化を目指して

――あらためて、今後の展望をお聞かせください。

井上:「無為と斑」の目的は、LIXILがブランドとして進化していく、大きく変わっていこうとしていることを、プロダクトを通して知っていただくことにあります。この展示会をきっかけに、これまでのLIXILとは異なる考え方やアプローチをしていくことで、今までにない価値を生み出したいと思っています。



こうした展示会だからこそできる自由な発想を繰り返すことで、次の価値ある商品作りにつなげていきたいというのが1番の目的です。皆さまが新たな商品を見て「あ、LIXILって変わったな」と思っていただけたときが、「無為に斑」プロジェクトが本当に目標を達成できたときだといえるでしょう。今後も、ぜひ私たちの取り組みに関心をお寄せいただけるとうれしいです。



<参考資料>
■「無為に斑」HP:https://www.lixil.co.jp/s/muinimula/

■展示で使用されるLIXILの環境配慮素材
・循環型低炭素アルミ「PremiAL(プレミアル)」:
原材料にリサイクルアルミを使用※1することで製造時のCO₂排出量の大幅な削減を実現。日本国内で初めて※2量産化に成功したリサイクルアルミ100%を使用した製品も擁する。
※1 シリーズによりリサイクルアルミ使用比率が異なります ※2 2024年3月LIXIL調べ

・循環型素材「revia(レビア)」:
再資源化が困難だった廃プラスチックに廃木材を融合させた循環型素材。
ほぼすべての廃プラスチックを原料として使用できるため、焼却によって発生するCO₂排出量の削減※と、プラスチックごみのマテリアルリサイクルの改善に貢献。
※ 焼却によって発生するCO₂排出量をレビア1t当たり1.93t削減

・窯業系素材「textone(テクストーン)」
本来焼却されるはずの籾殻や古紙など※自然由来の素材を意匠として活用した窯業系の素材。
能登半島地震で倒壊した家屋に使用されていた黒瓦を新たな建材へと生まれ変わらせ、建築物へ使用する取り組みも行う。
※製品重量の15%使用