(写真)左から、挟み込み防止安全装置を搭載したNODEA「WINDOW G」、トリプル旋回流節水トイレ
環境やデザイン、安全配慮など暮らしを豊かにするイノベーションを創発
株式会社LIXIL(以下LIXIL)は、地方において優れた発明、考案または意匠を生み出した技術者・研究開発者を顕彰する令和7年度地方発明表彰(主催:公益社団法人 発明協会)において、「大型スライド開口部の挟み込み防止安全装置」と、「トリプル旋回流節水トイレ」の2件が、発明奨励賞を受賞しましたことをお知らせいたします。
大型スライド開口部の挟み込み防止安全装置 (関東地方発明表彰・発明奨励賞)
近年、採光性やデザイン性を高めたシンプルで洗練された大開口の窓がトレンドとなっています。これらの大開口窓は、断熱や遮熱、強度の関係から、トリプル(三層)ガラスが採用され、重量化が進んでいます。その一方で、技術の向上により開閉性は極めてスムーズになっているため、重い窓が勢いよく閉まると、指などの挟み込み事故が発生すれば大きな危険が伴うことになります。そこでLIXILは、大開口ならではのノイズレスで美しいデザインを損なうことなく、安心して閉動作を行える装置を開発しました。電動装置のような外部動力に頼らず、構造的なメカニズムの工夫によって小型化を実現し、建材に馴染みます。このデバイスは、NODEA「WINODOW G」に採用されており、今後は他の商品への展開も視野にいれています。
トリプル旋回流節水トイレ(中部地方発明表彰・発明奨励賞)
水資源の重要性が高まり、さらなる節水技術の向上が求められる中、LIXILは2016年にトリプル旋回流を利用した節水トイレの技術を開発しました。3つの吐水口のうち1つは便器鉢内の手前右方向から折り返して吐水させるという斬新な構造を採用することで、強力な旋回流を作り出し、わずか4Lの少水量でありながら、高い洗浄力と清掃性を両立させました。
この技術は、日本市場のタンクレストイレ「SATIS G」(2016年発売モデル※)に採用されたほか、GROHEブランドとして欧州市場へ展開されるなど、日本で生み出された技術が海外でも広く普及し、世界的な節水性の向上に大きく貢献しました。
※現行モデルは仕様が異なります。
LIXILは今後も、これまでの枠にとらわれない斬新な発想、そして従業員の多様な視点を活かしイノベーションを創発していくことで、暮らしの未来を創造していきます。
参考資料
1.関東地方発明表彰について
賞名:発明奨励賞
発明名称:大型スライド開口部の挟み込み防止安全装置
発明区分:特許(第7333740号)
受賞者名:LHT デバイス事業部 安部 光太郎
受賞者から技術的なポイントを解説
「窓が、速いスピードで閉まる時は”動作を停止”させ、ゆっくり閉まる時は”スムーズ”に」
この物理現象は、物体を水平方向に投げた時に、重力の影響を受けない水平方向の等速運動と、重力の影響を受ける鉛直方向の自由落下運動という二要素に分けて考えることができます。
この法則に着眼し、窓を閉じる際の水平速度に応じて、自重により落下する動作部品が、窓枠側のストッパに衝突して停止するか、衝突を回避して作動を継続するかを正確に制御する機構を開発しました。
これにより、窓が、速いスピードで閉まる時は安全確保のために「確実に動作を停止」させ、逆にゆっくり閉まる時は利便性を重視して「そのままスムーズな作動を継続」する、安全性と利便性という二律背反の要素を兼ね備えた理想的な動作特性を実現しました。
2.中部地方発明表彰について
賞名:発明奨励賞
発明名称:トリプル旋回流節水トイレ
発明区分:特許(第6588611号)
受賞者名:LWTJ トイレ・タイル事業部 近藤 康宏、伊藤 謙一
受賞者から技術的なポイントを解説
「新発想の折り返し構造によって、高い洗浄力と清掃性を両立」
この技術開発では、従来の1方向の流路ではなく、左右2つの流路から同一の回転方向に吐水させる構造が必要でした。そこで、試行錯誤を重ね、便器前方に吐水口(第3吐水口)を設置し、洗浄水を折り返して吐水する独自の構造を開発しました。この折り返し構造については、製造のしやすさや吐水される洗浄水のコントロール、吐水口の見栄えなど、さまざまな要件を考慮し、実現に至りました。
3.地方発明表彰とは
地方における発明の奨励・育成を図り、科学技術の向上と地域産業の振興に寄与することを目的として、公益社団法人発明協会が大正10年に創設したもので、全国を8地方(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州)に分け、各地方において優れた発明、考案または意匠を生み出した技術者・研究開発者を顕彰するものです。
※令和7年度地方発明表彰については、下記URLよりご確認下さい。
公益社団法人 発明協会 地方発明表彰
https://koueki.jiii.or.jp/hyosho/chihatsu/chihatsu.html