株式会社 LIXIL(以下 LIXIL)は、インパクト戦略の柱の一つである「グローバルな衛生課題の解決」に取り組んでいますが、11月19日の「世界トイレの日」を前に、この課題解決に向けて推進してきた主要な取り組みと成果についてお知らせします。
世界では、現在、約35億人が安全に管理された衛生設備(トイレ)¹が利用できず、約20億人が家庭で基本的な手洗い設備を利用できない環境で暮らしています。LIXILは、「グローバルな衛生課題の解決」に向けて「2025 年までに 1億人の衛生環境を改善する」ことを目標に掲げて活動を推進しており、これまでに、45ヵ国で約6,800 万人の衛生環境の改善に貢献してきました。
パートナーシップを通じたインパクトの拡大
LIXILは、世界の衛生課題解決に向けた取り組みを加速させ、インパクトの拡大につなげていくために、国際連合児童基金(ユニセフ)や米国国際開発庁(USAID)などの国際機関から、各地域の企業・団体に至るまで、影響力を有するさまざまな組織と密接な連携体制を構築しています。
「MAKE A SPLASH!」ユニセフとのグローバルパートナーシップ
ユニセフとのグローバルパートナーシップ「MAKE A SPLASH!」を通じて、エチオピア、インド、インドネシア、ケニア、ナイジェリア、タンザニアの6か国において、手ごろな価格帯で、安全な衛生設備を利用することができるよう、連携して取り組みを推進してきました。過去5年間のパートナーシップ活動を通じて、1,270万人が基本的な衛生設備²にアクセスできるようになり、衛生環境の改善に貢献しました。
また、これまでの取り組みを通じて、持続可能な衛生市場の構築を推進しており、その上で重要な供給、需要、資金調達、環境整備、販売の5つの分野に関して貴重な学びを得ることができました。引き続き、各分野に注力しつつ包括的なアプローチを取ることで、インパクトをさらに拡大させ、より多くの人びとに安全な衛生環境を提供していくことを目指しています。LIXILとユニセフは、このパートナーシップを2027年まで延長し、アジアとアフリカの衛生環境の改善が最も求められる地域の人びとに対して、アクセス可能な衛生設備を提供するため、市場ベースのアプローチをさらに推進していきます。
USAIDとLIXILの「Partnership for Better Living」
LIXILとUSAIDは2022年に「Partnership for Better Living: Affordable, Accessible, Adaptable Sanitation Solutions (PBL)」を立ち上げ、発展途上国において衛生サービスが行き届いてない地域・人々を対象に、連携して取り組んできました。長期的に人びとの健康増進や社会経済の発展をもたらすことを目指し、手ごろな価格帯の衛生製品を提供するための市場拡大と、サプライチェーンの強化に注力しています。
USAIDが有する広範なネットワークと、LIXILのソーシャルビジネス「SATO」ブランドの強みであるデザインやイノベーションに関する専門知識を活用し、衛生的な環境への持続的なアクセスを2026年までに200万人以上へ提供するという目標を掲げて取り組みを進めてきました。現在、その目標を大きく超えて、すでに300万人以上³の衛生環境の改善を実現しています。
パートナーシップの活動は、最近、マダガスカルやセネガル、フィリピンにも拡大しました。各国においても、SATO製品の供給を確実なものとするため、現地のライセンス・パートナー(輸入業者や流通業者)を通じて、地域の小売業者や販売代理店、施工事業者のネットワークを構築し、高い信頼性を有した、持続可能な衛生環境を支えるサプライチェーンを構築しています。また、2024年よりその活動はリベリアやグアテマラにも拡大しています。
SATO事業:コラボレーションの加速
SATO事業では従来、一般家庭を主な対象として、開発途上国向けトイレシステムSATOやてあらいソリューションを提供してきました。公共機関や一般企業、NGOや地域パートナーなど多様なパートナーとの連携を拡大したことで、学校や医療施設、公衆トイレや難民キャンプなど、地域の人々が高い頻度で利用する施設・場所に対しても、SATO製品の設置を促進させることができ、より多くの人々に対して、衛生的なトイレや手洗い設備を提供することが可能になりました。
また、SATO事業では、学校における不十分な衛生設備に起因する出席率低下を防ぐことを目的に、学校のトイレの整備を支援する「学校トイレ改善プログラム(STEP)」を2020年から実施しています。このプログラムは、アフリカから導入が開始され、これまでにタンザニア、ケニア、エチオピア、ウガンダ、ルワンダ、ナイジェリアおよびバングラデシュの6か国へと広がり、約69,000人の子ども達が衛生的なトイレを利用できるようになりました。さらに、子どもたちが学校で安心して勉学に取り組める環境づくりを支援するため、eコマースプラットフォーム「SATOショップ」を開設しました。アジアやアフリカで活躍する地元アーティストとのコラボレーションによるTシャツなどを同ショップで販売し、その全収益をSTEPの資金として活用することで、学校の衛生環境の改善をさらに推進していきます。
未来型トイレの開発
LIXILでは、当社初の公共部門エンゲージメントの専門部隊である「LIXIL Public Partners(LPP)」が、持続可能な衛生ソリューションの提供拡大に向けた取り組みを強化しており、これは、2024年世界トイレの日のテーマである「Toilets - A Place for Peace」にも通じます。
LIXILは、十分な衛生インフラが整備されていない地域に向け、画期的なソリューションを提供するべく、ジョージア工科大学との連携を強化しています。今年3月、ジョージア工科大学率いる共同開発チームが手がける「第2世代再発明トイレ(G2RT: Generation II Reinvented Toilet)」の技術に関して、実用化に向けた初の商業ライセンスパートナーに選定されました。G2RTは、従来の下水道や浄化槽システムに依存せず、その場で排せつ物を処理する機能を備えた独立型トイレシステムです。最新技術を搭載し、排せつ物の液体部分は浄化して再利用され、固体部分については有害な病原体を除去し、堆肥としても利用可能な固形物にすることができます。
LIXILはこの革新的な技術の実用化に向けて、公共施設および一般家庭での利用を視野に入れ、リソースを投入していきます。このG2RTプロジェクトでは、製品の安全性や信頼性、耐久性の向上や、効率的なエネルギー消費技術の確立とその製造コストの削減を両立させることで、誰もが購入できるトイレ製品の実現を目指します。さらに、市場投入や普及を進めるために、今後必要とされる法的枠組みや規制の整備に向けた働きかけにも注力していく予定です。
LIXILの社長 兼CEOの瀬戸欣哉は、次のようにコメントしています。
「『持続可能な開発目標(SDGs)』の目標6に掲げられているように、安全な水とトイレを世界中の人びとが等しく利用できるようにすることは、これまで以上に重要になる一方、SDGsの2030年までの達成に向けた進捗は芳しくありません。LIXILは、この世界規模で深刻化する衛生課題の解決に積極的に取り組んでおり、製品の開発やイノベーションの推進に加え、様々なパートナーとの戦略的な連携体制を構築することで、衛生環境の改善に貢献してきました。
数々の受賞歴を誇るLIXILのソーシャルビジネス「SATO」は、2013年にバングラデシュに参入して以来、公共や民間の枠を超えたコラボレーションを通じて展開地域を拡大し、多様なニーズに対応する製品ポートフォリオを拡充するなど大きく発展してきました。さらに、既存のSATO事業の枠にとどまることなく、ジョージア工科大学と連携を深め、従来の衛生インフラに依存しない独立型トイレシステム『G2RT』の実用化に向けた第一歩を踏み出すことができました。革新的なトイレシステムを実現することで、世界の衛生課題の解決に向けて、大きな影響を与え得ると期待しています。
LIXILでは、2025年までに1億人の衛生環境を改善し、生活の質を向上させるという野心的な目標を掲げており、これまでの進捗を糧に、取り組みをさらに強化してまいります。」
バングラデシュでの最新の取り組みについてはこちらをご覧ください。
LIXILのインパクト戦略の詳細はこちらをご覧ください。
1 安全に管理された衛生設備(トイレ)とは、排泄物が他と接触しないように分けられている、あるいは、別の場所に運ばれて安全で衛生的に処理される設備を備えており、他の世帯と共有していない、改善された衛生設備(トイレ)を示しています。
2 基本的な衛生設備(トイレ)とは、他の世帯と共有されておらず、また、排泄物が衛生的に処理されていない、改善された衛生設備(トイレ)を示しています。改善された衛生設備(トイレ)からの排泄物が衛生的に処理されていない場合、それらの施設を使用している人々は基本的な衛生設備(トイレ)の利用者に該当します。
(参照元 https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_act01_03_sanitation.html)
3 本パートナーシップの全活動を通じて得られた成果であり、具体的には、USAIDのFYE2023・FYE2024において取り組まれた活動の結果、基本的な衛生設備および衛生製品にアクセスした人々の数となります。