チャプター2:
イノベーションを支えてきたコア技術
LIXILの水まわり・タイル国内事業(以下、LWTJ = LIXIL Water Technologhy Japan)は、2024年で100周年を迎えました。1924年にINAXの前身となる伊奈製陶を設立以来、新たな暮らしの価値を追求し続け、数々のイノベーションを創出してきました。
前回は、技術・商品開発の方向性となる【LWTJイノベーション創出指針】について紹介しました。今回は、私たちのコア技術が、LWTJイノベーション創出指針にどうつながっていくかを解説します。
まずは、LWTJのコア技術を特定するために、技術者・開発者・デザイナーとの対話を繰り返していきました。しかし、100年分のアウトプットは多岐にわたり、それらを俯瞰して見ただけではコア技術を特定することができませんでした。
そこで、LIXILがこれまで生み出してきた技術や製品を時系列で並べ、その共通点や関係性をひとつひとつ繋げていきました。
100年の歴史を技術的な視点で振り返ることで、私たちのコア技術を3つに特定しました。そして、製品とコア技術の関係を、樹齢100年の大樹に見立てました。
3つのコア技術は、「SMART AQUA」「NANO TECH」、そして「SPACE & HUMAN SCIENCE」に特定し、これらは過去から連綿と受け継がれて育てられてきたものです。この根っこのコア技術の要素を木として育て、最終的に製品として果実が実る、ということをここでは示しています。
ここで、3つのコア技術についてそれぞれ深堀りしていきます。
1つ目は、「SMART AQUA」ー水の多様な特性を目的に合わせて賢く活用
まず、最新の製品では、トイレ自らが掃除をするタンクレストイレ「SATIS X」、手をかざすだけで吐水をオン/オフできるタッチレス水栓「ナビッシュ」、水の流れを使って自家発電する自動水栓「オートマージュ」などが生み出されています。
実はこれらの製品は、水栓バルブの技術がタンクレストイレに活かされているなど、ひとつひとつの技術が派生して、新たな価値が付加された商品が誕生するわけです。
2つ目は、「NANO TECH」ー素材をナノレベルで科学して機能性と美しさを実現
「NANO TECH」は、素材をナノレベルで科学して、機能性と美しさを実現する技術です。これを活用した製品として、優れた調湿機能に加え、気になるニオイやホルムアルデヒドなどの有害物質を低減し、室内の快適な空気環境づくりをサポートする内装壁機能建材「エコカラット」や、安心でおいしい水を生み出す「浄水カートリッジ」などがあげられます。
「エコカラット」は、発泡セラミック「カロムース」の技術が応用されています。また「浄水カートリッジ」は、独自技術の高性能セラミックフィルターにより、抗菌性があるため浄水カートリッジ部に雑菌が繁殖しにくく、いつでも安心でおいしい浄水をお届けすることができます。
このように、素材の特性を活かし、LIXILの技術を加えることで、暮らしを快適にする商品が生まれます。
3つ目は、「SPACE & HUMAN SCIENCE」ー空間における商品の納まり、人の行動や心理を捉え価値を創造
「SPACE & HUMAN SCIENCE」は、空間における商品の納まり、人の行動や心理を捉え価値を創造する技術です。この技術を活用したものとして、テコの原理を応用し軽い力でラクにあけられるキッチンの収納「らくパッと収納」や心地よい肩ほぐし湯「アクアフィール」などがあります。
「らくパッと収納」は、道具を取り出す姿勢、肩の傾きが動作に与える影響など、人の行動を丁寧に観察し分析し、技術開発を行っています。また、「アクアフィール」も、実際に人間がマッサージする動作や効果を、水の流れで実現できるよう、ウェーブ状の水流を肩の緊張しやすい部分にリズミカルに当てることでリラックス効果を高めています。
このように、LWTJ では3つのコア技術である「SMART AQUA」「NANO TECH」「 SPACE &HUMAN SCIENCE」を活かして商品の差別化を図り、お客さまへ新しい価値を提供してまいりました。これらの3つの技術が、イノベーション創出の⼀番のポイントとなります。
根となるコア技術を支えに木を育み、樹齢100年を迎えました。これから先もこの木にたくさんの果実(=商品)が実り続けるよう、成長を続けてまいります。そのためにも、LWTJにおける共通のイノベーション創出指針を意識しながら、各事業部の強みを活かした商品開発を行っていきます。
今回は、【イノベーションを支えてきたコア技術】について、深掘りしました。次のチャプターでは、【建築家・デザイナーとの共創】について紹介し、私たちのイノベーションを支えてきた建築家的思考について解説します。