LIXIL 2024年3月期第4四半期通期決算(IFRS)
海外市場の需要低迷が継続し、前年比で減収減益
■海外事業は、金利の高止まりとインフレーションの長期化で、欧米を中心に低調に推移
■国内事業は新設住宅着工戸数の減少が影響するも、窓リフォーム向け売上が伸び期初計画通りの着地
株式会社 LIXIL(以下 LIXIL)は本日、2024年3月期第4四半期通期決算(2023年4月ー2024年3月)を発表しました。
◆LIXIL 社長 兼CEO 瀬戸欣哉のコメント
「2024年3月期は、国内では、新設住宅着工戸数が期初の計画を大きく下回って推移したものの、高断熱製品を中心に、リフォーム向け商材の需要獲得が収益の下支えとなりました。一方で、海外において非常に厳しい事業環境に直面し、特に欧米では1年を通して需要の低迷が続き、連結では減収減益となりました。
事業環境の悪化に対応するには、市場環境の変化に先んじた取り組みが重要です。当社は、経営の基本的方向性を示した『LIXIL Playbook』の優先課題に基づき、積極的な対策を講じてきました。海外事業の収益性の回復に向けては、期初から構造改革に取り組み、欧米を中心にした人員配置の最適化、不採算事業の整理など事業ポートフォリオのさらなる見直し、サプライチェーンの再構築などを推進してきました。こうした取り組みの成果が、2025年3月期の収益の改善に貢献する見込みです。
また当社は、業績の向上と持続的成長に向けて、差別化商品の拡大と、社会や環境へのインパクト(良い影響)創出を同時に実現することを目指しています。より機動的で起業家精神にあふれた組織へと変革する取り組みを続けてきましたが、今後も引き続き、デジタル化の加速とインクルーシブな企業文化の醸成を通じてイノベーションを推進し、新たな成長機会につなげてまいります」
◆決算の概要
売上収益
2024年3月期通期の連結売上収益は、前年比0.9%減の1兆4,832億円となりました。国内事業は、新設住宅着工戸数が当初計画に比べて大きく減少したものの、高性能の断熱窓でリフォーム向けの売上が前年比で伸びたことが売上を下支えし、売上収益は前年からほぼ横ばいの9,913億円となりました。
海外事業では、金利の高止まりとインフレーションの長期化を受け、欧米市場で住宅関連商品の需要低迷が続き、売上収益は現地通貨ベースでは前年比12%減、円安の影響により円貨ベースでは4%の減収の5,021億円となりました。第4四半期(3か月)では需要低迷は底打ちしたものの、需要回復には至りませんでした。
事業利益
事業利益は、通期では前年比で10%減の232億円となりました。アジアの一部を除く需要の低迷が大きな原因です。売上総利益率は31.9%と0.5pt上昇しましたが、為替影響による人件費など販管費の増加もあり、事業利益率は1.6%と0.2pt低下しました。第4四半期(3か月)でみると、事業損益は35億円の赤字で、前年同期から82億円減となりました。
非継続事業を含む親会社の所有者に帰属する最終利益
最終損益は前年比299億円減少し、139億円の赤字でした。これは主に、一部事業の整理も含む構造改革が早期に実現したことによる費用の増加、金利の上昇による金融費用の増加、収益性の一時的な悪化に伴う税金費用が増加したことによるものです。また、当社の連結子会社だったPermasteelisa S.p.A.にかかる損失も計上しています。
期末配当予想
期末配当予想は1株あたり45円で据え置きました。年間配当金は前年と同じく90円を予想しています。
2025年3月期通期業績予想
売上収益は1兆5,700億円、事業利益は350億円の増収増益を計画しています。年間配当金は1株あたり90円を予想しています。
事業・地域別の業績
水まわり事業を手がけるLIXIL Water Technology (LWT)の国内事業では、売上収益は4,205億円とほぼ横ばいでした。一方で、事業利益は16.4%減の209億円、事業利益率は5.0%と1.0pt低下しました。戦略的に取り組んできた価格改定の効果とリフォーム向けの売上は増えたものの、新築向けの売上減による粗利益の減少の影響が大きく、価格改定効果と固定費削減で補いきれませんでした。国内のリフォーム向け売上構成比は前年比1.6pt上昇し、51%となりました。
LWTの海外事業の売上収益は、金利上昇とインフレーションによる需要低迷が響き、前年比4.1%減の4,764億円となりました。アメリカ地域では、金利引き下げへの期待感が高まるなか、需要が減退したことが響き、現地通貨ベースで前年同期比5%の減収となりました。欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域では、特に欧州において金利の高止まりによる影響から住宅投資への需要低迷が続き、現地通貨ベースで17%の減収となりました。中国では、不動産市況の低迷と景気の悪化による消費意欲の低下により、現地通貨ベースで2%の減収となりました。アジア太平洋地域では、インドでは堅調な売上成長が続く一方で、ベトナムでは不動産市況の低迷による影響が続くなど、地域によって売上の増減があり、現地通貨ベースで4%の減収でした。為替影響による販管費の上昇もあり、海外事業の事業利益は前年比91.7%減の18億円、事業利益率は0.4%と前年から4.1pt低下しました。
住宅建材事業等を展開するLIXIL Housing Technology(LHT)では、リフォーム需要を取り込んだものの、新築向けの売上の低迷を受け、売上収益は5,964億円とほぼ横ばいでした。事業利益は前年から85.4%増の359億円と大きく伸びました。コスト上昇に対応した価格改定により収益性を回復したほか、政府の補助金の後押しもあり高性能の断熱窓の販売が好調で、大幅な増益となりました。事業利益率は6.0%と前年から2.8pt上昇しました。国内のリフォーム向け売上構成比は前年比3.5pt増加し、38%となりました。
◆「LIXIL Playbook」の戦略的優先課題への取り組み
LIXILでは、経営の基本的方向性を示した「LIXIL Playbook」における5つの戦略的優先課題への対応に注力しており、2024年3月期においても持続的な成長に向けて、着実に前進してきました。
インフレーションとサプライチェーンにおける課題への対応
海外事業の構造改革と連動し、アジア地域での一部工場の整理など、サプライチェーンの再構築を進めました。2025年3月期にも、サプライチェーンの再構築を含め、競争力と生産性の向上に向けた施策を継続して実施する予定です。
日本事業の最適化と新たな事業成長の追求
国内事業は、LIXILがかねてから取り組んできた高性能の断熱窓など、リフォーム向け商材の需要が堅調に伸びています。人工知能(AI)などを活用したデジタル化に加え、国内の開発リソースの海外市場への展開も進めていきます。
ウォーター事業における海外事業の成長促進
海外では収益性の回復に向け、人員配置の最適化や、不採算事業や相乗効果の見込めない事業を中心とした事業ポートフォリオの最適化など、包括的な構造改革を進めました。2025年3月期の収益性の底上げに貢献する見込みです。また、米国市場における水栓金具の拡販、中東をはじめとする成長市場への更なる展開も進めていきます。
環境戦略の事業戦略への統合
社会や環境課題の解決に貢献する、環境配慮型製品のラインナップの拡充を推進してきました。特に低炭素型アルミ形材の「PremiAL」は、サプライチェーンの脱炭素への意識の高まりから引き合いが強まっています。
新たなコア事業の創出
差別化製品の拡大による持続的成長に向け、変化する消費者のニーズと、幅広い社会課題の解決に着目しながら、新たな事業の柱の構築に取り組んでいます。
低炭素型アルミ形材「PremiAL」や廃プラスチックと廃木材を融合した循環型素材「レビア」、断熱リフォーム商品、安全性を高めたおいしい水を提供し、プラスチックゴミの削減につながるウォーターシステム製品、女性の健康を支えるフェムテックの視点を取り入れたシャワートイレ、入浴介助の負担軽減など多様なニーズに応える泡シャワー「KINUAMI」など、革新的な技術や発想による商品がすでに生まれています。このような商材が全社売上の過半を占める規模にまで成長することで、持続的に高い利益率を実現することが可能となり、持続的な成長と社会へのインパクト創出を両立させる企業になることを目指します。2025年3月期は、その基盤づくりと構造改革の完了に向けて注力します。
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