建築物のホールライフカーボン削減の観点から見た、地域に最適な窓とは

(写真)【中央】Schueco International KG CEOのAndreas Engelhardt、【右】LIXIL 取締役 代表執行役社長兼CEOの瀬戸欣哉、【左】LIXIL 執行役専務 LHT担当の吉田聡
株式会社LIXIL(以下LIXIL)は、その高い断熱性能と美しいデザインで知られるドイツの窓メーカーSchueco International KG(以下、Schueco)との連携をさらに深める運びとなりました。この重要なパートナーシップ強化に向けて、SchuecoのCEOであるAndreas Engelhardt氏を迎え、LIXILからは取締役 代表執行役社長兼CEOの瀬戸欣哉、そして執行役専務の吉田聡がその意義と展望について発表いたしました。当日の模様をレポートいたします。
資材調達から解体に至るまでのホールライフカーボンの削減を考えることが重要
瀬戸:LIXILという会社を長期的に考えた際、差別化が必要です。では、どうすれば差別化できるのか。LIXILは、環境や社会に貢献し世の中を変えていく会社として舵を切っていきます。製品のイノベーションも、ビジネスのイノベーションも、世界的な社会課題の解決と事業成長を一緒に考えていく。これがLIXILの戦略です。
そのなかで、重要な課題の一つがCO2排出量の削減、気候変動に対する対策です。世界のCO2排出量の約37%は建設部門、つまり私たちのビジネスに関わる領域が占めています。この削減が非常に大切ですが、日本ではこの削減において断熱”のみ”が注目されがちになっていないでしょうか。
断熱、つまり日々のCO2排出にかかわるところは、オペレーショナルカーボンと呼ばれています。しかし、建設部門のCO2排出はそれだけではなく、建材や住宅設備の製造時や、住宅の解体・リサイクルをする際にも排出されるわけです。こちらをエンボディドカーボンと呼びます。オペレーショナルカーボン、エンボディドカーボンすべてを合わせたものがホールライフカーボンです。このホールライフカーボンのなかで、オペレーショナルカーボンが占める割合は50%程度しかありません。
これまで注目されてきたオペレーショナルカーボンと異なり、エンボディドカーボンはかなりの部分が見過ごされてきたと考えています。これからは、製品の誕生から誕生を考えた取り組みを行っていかなければなりません。これはヨーロッパで言われるCradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)というモノづくりの概念で、Schuecoはその観点でも非常に先進的な会社です。
エンボディドカーボン削減に向けたLIXILの取り組みの一つが、リサイクルアルミ使用比率100%もしくは70%を実現した循環型低炭素アルミ「PremiAL(プレミアル)」です。新地金からリサイクルアルミに転換することで、CO₂排出量を97%削減することが可能となるわけです。LIXILでは他にも、さまざまな廃プラスチックを再生資材として活用した製品も展開しています。
こうした取り組みをさらに進めるため、環境先進国であるドイツ、そのなかでもトップクラスのメーカーであるSchuecoと2021年にパートナーシップを組み、合弁会社を設立しました。そしてこのたび、さらにパートナーシップを強化し、両社の技術や知見を活かし、日本のカーボンニュートラルの実現に向けて貢献したいと考えています。
CO2削減は世界中の企業が責任を負うべきものである―Schuecoの取り組み
Engelhardt:今日お伝えしたいのは、私たちは皆、地球に対して責任があるということです。私たちが吸う空気には国境がありません。世界中で、皆が同じ空気を吸っています。そのため、CO2の排出においては、政府はもちろんですが、世界中の企業が責任を負わなければなりません。
カーボンニュートラルにおける目標を達成するための企業の責任の一つは、革新的な製品を出すこと、そしてそれらがアップサイクルされ、循環型の製品をつくっていくことです。なぜならば、私たちの資源には限りがあるからです。企業は、世界中の資源が無制限ではないことを受け入れたうえで、ビジネスモデルを構築しなければなりません。
今回お伝えしたい最も重要なメッセージの一つは、アルミの進化です。この図で数字を見ていただくとわかるように、かつてはアルミ、木材、樹脂、木材・アルミの複合素材の断熱性能には大きな差がありました。しかし、長年にわたる技術革新によりアルミの断熱性が向上してきたのです。アルミは、断熱性だけではなくリサイクル性に優れているためホールライフカーボンの削減に寄与します。また、見た目のシャープさや耐久性もあり、窓において最適な素材です。まさに、アルミは、未来の資材なのです。
Schuecoは、ドイツや欧州、世界の様々な国の異なる政策にあわせて、アルミ製品を何十年にもわたって我々のポートフォリオの中で改善してきました。特にドイツでは、近年、エネルギー効率を重視した規制が積極的に推進され、その結果として特に新築において、国際基準ですでに高いレベルのエネルギー効率を実現しています。また、既存の建物のエネルギー効率を高めるために、リノベーション用の高断熱ソリューションを含む製品ポートフォリオを拡大しています。
今後もSchuecoの製品を通じて、建築物のホールライフカーボンの大幅な削減に取り組むと共に、世界のカーボンニュートラルの実現に向けて、Schuecoの製品を世界中の市場に提供していきたいと考えています。
日本市場への本格的な商品投入により、建築物のホールライフカーボン削減に貢献を
吉田:このパートナーシップでは、高性能のアルミサッシを提供することで、建築物のホールライフカーボンの削減に貢献してまいりたいと考えています。アルミサッシでありながら樹脂サッシ同等もしくは、樹脂サッシよりいいような断熱性能をもつSchuecoの技術、北海道から沖縄まで縦長で地域によって気候風土が異なる日本におけるLIXILの知見を合わせた商品開発を行っていくことで、オペレーショナルカーボンの削減に貢献できます。また、Schuecoのもつ「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)」という環境配慮型の設計思想、そしてLIXILのもつ循環型低炭素アルミ「PremiAL」を使うことによって、エンボディドカーボンの削減、ひいてはホールライフカーボン削減に貢献してまいります。
具体的には、LIXILおよびシューコー・ジャパンにおいて、高性能アルミ窓「ASE60」や高性能カーテンウォール「FWS50.SI」といった、建築物の用途(住宅、マンション、ビル、店舗など)を問わずに採用可能で、断熱性や気密性・意匠性などに優れたSchuecoブランド製品の販売を本格的に開始します。加えて、最大障子サイズの折れ戸や、Uw値0.83の超高断熱ドレーキップなど、特色あるSchuecoの断熱商品群を順次、日本市場に投入します。これにより、特にLIXILおよびシューコー・ジャパンが展開するビル建材の断熱性能の最高値が飛躍的に高まります。LIXILは、ビル向け建材において、高性能なSchueco製品を含めたUw値1.9以下の高断熱製品の国内向け販売構成比率を2040年3月期までに50%へと引き上げることを目指すとともに、拡大するリノベーション市場向けに、さらなるSchueco製品の展開も検討します。
LIXILはこれまで、日本は南北に長い地形となっているため、一概に窓の素材で決めるのではなく、断熱性能だけではなくホールライフカーボンの視点も入れた本当に環境によくて性能の高く、地域に最適な窓を提供する「GREEN WINDOW」の普及を進めてまいりました。Schuecoとのパートナーシップにより、住宅・マンションというものだけではなく、非居住のビル・店舗などにもこの「GREEN WINDOW」の提案を進めてまいります。
最後になりますが、私たちは脱炭素・循環型社会に向け、戦略的パートナーシップの強化により両社の取り組みを加速させてまいりたいと思っております。ぜひご期待ください。
【LIXILのイノベーション】
LIXILでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパス(存在意義)の実現に向け、常に新しいことにチャレンジしています。これまでの枠にとらわれない斬新な発想、そしてさまざまなバックグラウンドを持つ従業員の多様な視点や協業者とのコラボレーションから生まれる新たな価値-このようなことを大切にし、イノベーションを創発していくことで暮らしの未来を創造していきます。
LIXILは今後も、私たちの行動指針LIXIL Behaviorsの一つにある「実験し、学ぶ」企業文化を醸成し、“やってみよう”と仲間が背中を押してくれる環境を整えてまいります。
https://www.lixil.co.jp/corporate/innovation/