LIXILやきもの技術で、建設発生土を利かし焼いた『八重洲焼きタイル』が、 東京ミッドタウン八重洲にその土地の記憶を刻む~廃棄することが多い建設発生土を利活用し、環境負荷低減に貢献する外壁タイルの施工事例を紹介~
(写真) 3種類の『八重洲焼きタイル』が貼られた「八重洲ウォーク」の塀
株式会社LIXIL(以下LIXIL)は、2023年3月に全体開業した「東京ミッドタウン八重洲」の外壁において、建設発生土を用いた『八重洲焼きタイル』を製作しました。
この『八重洲焼きタイル』は、東京駅八重洲南口に今年オープンした「東京ミッドタウン八重洲」内にある小学校のファサードや八重洲ウォークの塀に使用され、土地の記憶を再現しています。
今回取り組んだ『八重洲焼きタイル』のプロジェクトは、株式会社竹中工務店の設計者による未来への想いが詰まっています。建設発生土をリサイクル素材として建築時に少しでも使うことで環境負荷低減につなげたい、歴史ある敷地の土を使うことで土地の記憶を再現したタイルをつくりたいという提案からスタートしました。
LIXILはこの提案に向き合い、これまで培ったやきもの技術・知見をもとにタイル製作に取り組みました。掘削工事段階で発生する土の多くは、廃棄物として扱われ、搬出先の環境に大きく影響を与える要因の一つとなっています。この建設発生土を使い建物の仕上げ材となる外装タイルとして利活用することで、搬出先の環境への影響を少しでも減らすことが可能となり、SDGs目標12「つくる責任つかう責任」の目指す再生材利用にも貢献します。
この『八重洲焼きタイル』製作にあたっての大きな課題は、「現地で採取した土をいかに多く使用してタイルが製作できるか」という点でした。一般的にタイルの原料となる土は不純物を極力排除し、製品の寸法精度、発色の安定性など、タイルの品質を担保するために調合したものを使います。しかし、建設現場で採取した土は不純物が多いため、排除処理や土の特性に合わせた調整が必要となります。
LIXILでは、採取した土の成分分析を行い、建設発生土をタイルの原料に混合した際の最適な混合率と焼成温度を探るため試験を何度も行い、外装タイルとしての品質を担保し、設計意図に基づくデザイン意匠をクリアし生産に至りました。
出来上がった『八重洲焼きタイル』は、八重洲の敷地の土を混ぜることによって、焼成での変形や色ムラ、表面の艶の違いなどのバラツキが生まれますが、このバラツキこそが『八重洲焼きタイル』ならではの特徴となり、土地の記憶を刻む深遠な味わいとなっています。
『八重洲焼きタイル』は、「東京ミッドタウン八重洲」内にある柳通側の城東小学校のピロティ空間と、京橋方面に抜ける八重洲ウォークの2カ所に採用されています。お近くにお越しの際は、是非ご覧いただき、触れて土地の記憶を体感してください。
この『八重洲焼きタイル』は、日本六古窯のひとつ、千年のやきものの歴史を持ち、伊奈製陶創業の地である「常滑」の新たな価値創造に取り組む「LIXILやきもの工房」で製作しました。「LIXILやきもの工房」は、ものづくりの精神と叡智を先人の偉業に学び、伝統と技に支えられ、歴史・文化的価値の高い建築物のタイル復原・再生、アーティストやクリエイターとのコラボレーションによる革新的なものづくりに挑戦し、懐かしくも新しいやきもの技術への取り組みを続けています。
https://livingculture.lixil.com/ilm/facility/ceramicslab/
参考資料
■LIXILやきもの技術 ~タイルの復原・再生プロジェクトを通じた建築文化の継承~
LIXILは、創業期より建築や専門家と手を携え、やきものの洗練された美しさと機能性の追求をしてきました。先人のクラフトマンシップを今に語り継ぎ、街の景観や人々の暮らしを豊かにしたいという信念のもと、ものづくりを続けています。
今から遡ることちょうど100年。20世紀建築界の巨匠、フランク・ロイド・ライトの代表作の一つとして知られる「帝国ホテル旧本館(ライト館)」は、常滑に設立された直営工場「帝国ホテル煉瓦製作所」で焼かれたタイルとテラコッタで装飾されました。関東大震災にも耐えたといわれる新しい建築構造は、震災の災禍からの力強い復興の象徴となりました。震災後、日本における鉄筋コンクリート造建築と、タイルやテラコッタなどの建築陶器による装飾は時代のさきがけとなり、百貨店、銀行、官庁などに使われ、多くの近代建築が築かれました。LIXILは、外装タイル事業の前身である帝国ホテル煉瓦製作所で培ったやきもの技術を受け継ぎ、現在に至ります。
やきものであるタイルは、燃えない、腐らない、溶けない素材のため、やきものが内包する時間軸は相対的に長く、建築物の仕上げ材として優れています。近年では、文化・歴史的価値ある建築物やそれを取り巻く景観を継承するにあたり、タイルの「復原」や「再生(再利用)」について多くのお客さまからご要望をいただき再現に取り組んでいます。
・事例1:JPタワー
旧東京中央郵便局舎の白いタイルを復原・再生(再利用)したJPタワー。創建時の白く美しい外観を再現するため、80種類を超える役物の形状はもとより、タイルの色、班、釉薬の表情から、当時の焼きムラなどのバラツキに至るまで忠実に復原。再利用可能な既存タイルはモルタル除去・洗浄により再生し、復原タイルとともに旧東京中央郵便局の記憶としてJPタワーの象徴的な外観となっています。
創建時の白く、美しい外観を忠実に復すため、80種類を超える役物の形状はもとより、タイルの色、班、釉薬の表情からそのばらつきに至るまで、忠実に再現しました。外装特注施釉タイルは、光沢感を透明釉で表現しています。
・事例2:旧本多忠次邸〈国登録有形文化財(建造物))
昭和7年(1932年)に建設された洋館邸宅の移築復原にともない、内外装に使われているオリジナルタイルの再生と欠損箇所のタイルを復原。昭和の長い時を超えてきたタイルは、モルタル除去・洗浄し再生することにより、不足分を復原し製作するタイルの量を最小限に抑えサステナビリティに配慮。オリジナルタイルの裏には施工時のモルタルが付着している状態のため、専用の薬品などに浸した後、一つ一つ大切にモルタルを除去し再利用を可能にしました。再生されたタイルは移築復原によって丁寧に施工され、歴史ある豪壮な洋館は国登録有形文化財(建造物)となっています。
LIXILでは、さまざまな復原・再生プロジェクトに参画し、建築文化を継承し、環境負荷低減につながるサステナブル活動に貢献していきます。
■プロユーザーさま向けツール・施設のご紹介
・設計者・デザイナーのための次世代タイル研究所「DESGNER’s TILE LAB」
「DTL -DESIGNER’s TILE LAB-」は、タイルが持つ可能性を伝えながら、設計者やデザイナー向けにタイルの使い方やコンセプトを提案し、INAXブランドのタイルの「いま」を紹介するWebサイトです。カタログ紙面で伝えきれない豊富な施工例やタイルの視覚的なイメージを、Webならではの表現手法を用いて、その魅力を伝えます。また、商品情報だけでなく、イベント情報・レポート、施工事例などを検索することも可能です。
https://www.lixil.co.jp/lineup/tile/designers_tile_lab/
・INAXタイルコンサルティングルーム
プロユーザーの皆さまに向けて、INAXタイルの技術と商品を知っていただくためのスペースとしてタイルコンサルティングルームをご用意しております。各種製品の展示だけでなく、皆さまから直接ニーズを承ってのご提案や、最新の事例ご紹介など、コンサルティングを中心に多彩な機能をご用意しています。
https://www.biz-lixil.com/tile_consultingroom/