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    「Re-think廃材プロジェクト」 ~廃材を活用した「アップサイクルアート」への取り組みから事業活動とサステナビリティの両立についてひも解く~

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    LIXILは、建築家やデザイナー、アーティストなど国内外のクリエーターとの創作活動を通じて、革新的なやきものづくりに挑戦しています。今回は、廃材を活用した「アップサイクルアート」への取り組みについてご紹介します。
     
    以前LIXILは、泊まれるアートをコンセプトにしたBnAホテルのプロジェクトを通じてクリエーター福垣慶吾さんとコラボレーションする機会に恵まれました。(詳細はこちら
    今回、福垣さんは、持続可能な新しい価値を生み出すためのイベント「SusHi Tech Tokyo 2024」で、普段の生活の中で忘れてしまっているゴミや廃棄物にスポットライトを当て、未来を想像する屋外アート展示「Re-think廃材プロジェクト」を手がけ、LIXILにお声がけいただきました。このような、"捨てられるはずだった廃棄物を、別の新しい作品として生まれ変わらせたアート作品”のことを、「アップサイクルアート」と呼びます。
     
    2024年、LIXIL水まわり・タイル事業は100周年を迎えました。LIXILは、事業戦略と環境への取り組みを両立し、資源の削減と循環を顧客価値につなげるものづくりを意識しています。例えば、デザイン視点におけるプラスチック資源の削減に向けたアプローチとして、商品パッケージに紙の利用を推進しています。(詳細はこちら
    今回のプロジェクトでは、LIXILで使われなくなったタイルのサンプルを有価物として買い取り、それらを活用しアート作品にしていただきました。
      
    今回はこの取り組みをさらに深く理解するために、LWT Japan  デザイン・新技術統括部  デザインセンター冨岡がモデレーターとなり、福垣さん、magmaさん、LIXIL従業員にインタビューを実施しました。
     
     
    <メンバー紹介>
     
    20240906 (13)福垣慶吾  Keigo Julian Fukugaki
    Super Catalyst (空間デザイナー、プロダクトデザイナー、起業家)
    日本在住、日系アメリカ人。2006年、カリフォルニア州立サンルイスオビスポ工科大学建築学科卒業。米国とオーストリアで建築デザイナーとして働いた後、26歳で日本に移住。2013年に空間設計アトリエMakeshiftを設立し、建築、インテリア、プロダクトデザインからアプリ開発まで、様々なプロジェクトに携わる。2015年にアートホテルブランド (BnA ホテル)を立ち上げる。BnAでは現在日本国内に4件のホテルの企画、デザイン、施工、運営まで行っている。 
      
    20240906 (7)
    magma
    杉山純と宮澤謙一によるアーティストユニット。
    廃材や樹脂、電動器具などを組み合わせ創りだす独自の世界観で、作品制作にとどまらず家具やプロダクト、空間演出ディレクション・制作まで幅広く手がける。
    どこか懐かしさを覚えるアナログ感とクレイジーな色彩が融合した作品群は、国内外から注目を集めている。
     
      
    20240906 (9)冨岡陽一郎 (モデレーター)
    LWT Japan デザイン・新技術統括部 デザインセンター 
    ブランド戦略・デザイン、研究開発、マーケティングを経て、2023年から現職。数々の水まわり製品でiF / red dot / グッドデザイン賞を受賞。LIXIL水まわり・タイル事業100周年のプロジェクト推進リーダーとして、イノベーション創出に関わる。
     
     
     
    株式会社LIXIL タイル事業部
    タイル事業部 タイル商品部/中川剛、タイル製造部 タイル海外調達センター/菊川 敦史、タイル製造部 常滑東工場 管理課/溝口 裕也、タイル開発部 タイル設計G/小林 竜也、タイル商品部 商品企画G/清家 大輔
     
     
    冨岡ーSusHi Techとはどのようなイベントでしょうか。SusHi TechにてRe-think廃材を展示することになった経緯を教えてください。
     
    福垣さんー今年の初めに、東京都主催のサステナビリティをテーマとする未来の東京を体験できる大規模ショーケースイベント「SusHi Tech 2024」において、屋外アートの展示キュレーションの依頼を受けました。
     20240906 (2)
    空間デザイナーとして以前より建築現場から出る大量のゴミや廃材をいつも見ていたこともあり、廃材を活用したアートプロジェクトを提案しました。
    ゴミや廃棄物という人工的に生み出されたモノを、アーティストやクリエーターの手によって再構築することで、新たな未来を創造するプロジェクトとなりました。
     
     
    冨岡ー「Re-think廃材プロジェクト」とはどのような活動でしょうか。
     
    福垣さんー「SusHi Tech 2024」の期間中、会場では数多くの廃材アートのワークショップや、屋外での作品展示を通じて廃材を使ったサステナブルアートを披露しました。また、アーティストやデザイナーによって作られた廃材作品をアートショップで販売することで、ゴミを価値ある物として作り変えた事を実証しました。
     
    「SusHi Tech 2024」が終了した今も「Re-think廃材」は継続して行うアート・デザインプロジェクトとなり、展示やワークショップと作品販売を行っています(詳細はこちら

    冨岡ー持続可能性について一般の方・アーティスト・企業に意識してもらうにはどのような事が重要でしょうか?
     
    福垣さんー今回のプロジェクトを通じて様々なゴミや廃材を集め、触れる機会を貰いました。そのような中、気づいたことがあります。自分の周りを見渡してみてください。身の回りにあるモノは25年後には殆どのモノがゴミとして捨てられて行くでしょう。
     
     我々の社会では、誰もが新しいモノを作り、消費して行く事を前提とした社会となっています。つまり、未来は我々が作って行くモノであり、それと比例してゴミや廃材というモノを知ることも同時に行っているのです。今後のモノづくりのプロセスの中で、新しく作ると言う行為で一体何をゴミにするのか考えてみてもいいのかもしれません。
     
     
    冨岡ーアーティストとコラボすることでどのようなことを実現したいと思いましたか?また今回の出展を通じて、展示を見に来ていただいた方からどのような反応がありましたでしょうか。
     
    福垣さんーゴミや廃棄物という人工的に生み出される物をアーティストやクリエーターの手によって再構築することで新たな未来を創造していきたいと思いました。ゴミに宿る歴史やストーリーを感じる新しい未来が少し描けたと感じています。
    「こんなものもゴミになるんだ!そうだよね!」など、身の回りのモノがいつかゴミになって行くことを忘れていたと数多くの人から聞きました。また、「廃材をこんなに面白く使って新しいモノが作れるなんて思わなかった!」と、ゴミが”工夫とクリエイティビティ”によってまだまだ活用できる可能性があることに感動の声を頂きました。
     
    冨岡ーアート作品として廃材を利用する価値とはどのようなことでしょうか。
     
    magmaさんー現在につくられたモノではなく、今の時代には珍しい形やデザインが新鮮で面白い。
    それらをまた別の時代のモノと組み合わせることで、見たことのないモノと既視感がミックスされ複雑で予期せぬ偶然が生まれ楽しいです。
    廃材と言っても単なるゴミではなく、前の持ち主が新品の素材を使って、不必要になった部分が廃材なのかなと思います。なので一概に廃材はゴミではなく、他人の意思で切り取られ使用されなかったカケラの素材なような気がします。その中でも自分達でも欲しくなる絶妙な形をしていたり、想像力を掻き立てられるような切り取られ方をした廃材は、魅力的です。
     
     
    冨岡ータイルの魅力はなんでしょうか?
     
    magmaさんー作られた時代や使用用途が全く違うタイルが同じ平面に配置されると見たことのない組み合わせや、物質としても耐久性のある面白いコラージュ作品になる気がします。
     

    冨岡ー今後のLIXILへの期待についてお伺いしたいです。
     
    福垣さんー是非、今後も新しいモノを生み出す過程でアーティストやクリエーターと共に新しい未来を想像していただけると嬉しいです。
     
    magmaさんー通勤ルートにリフォーム屋さんがあって、そこの店頭に廃材ボックスがありほしい人は無料でもらえるサービスがあります。そこを通るたびにいいものがないか気になっています。
    今回のように廃材がそのまま廃棄されず、それを廃材としてではなく必要としている誰かのところへたどり着けるようなルートがあると地球のためにも、LIXILさんのためにも、僕らにとっても嬉しいです。
     
     
    冨岡ーここからはタイルの生産や開発に携わっているLIXIL従業員に聞きます。普段LIXILでは、不用となったタイルをどのように処理していますか?
     
    LIXILタイル事業部ー開発品、展示品で不用となったタイルは、業者に分別を依頼し、産業廃棄物として処理を行っています。また、タイル原料としての再生も一部行っているほか、製品が良品で対象現場がある場合には、商品紹介に活用します。
     
     
    冨岡ー今回は、どのような形でタイルを集めましたか?収集するにあたっての課題はなんでしょうか?
     
    LIXILタイル事業部ー今回は、新商品の品質を検証するために比較対象として取り寄せたタイル、受入検査で品質試験を行い在庫に戻せないタイル、廃番になった商品の残品を集めました。各工場、開発部門で集めたタイルを、各拠点を巡って回収・梱包し、まとめて発送しました。
    収集自体に特に問題はありませんでしたが、定常化を図る場合、使用しなくなったタイルを各拠点から集約する仕組みが必要だと感じています。また、同じタイルをまとまった数量で確保することは難しく、集めたタイルには無傷のものから欠けが発生したもの、切断されたものが一カ所に集められることがあるので、再利用の用途に応じて、分別作業の手間が発生するのも課題です。
     
     
    冨岡ー今後、タイルではどのような形でサステナビリティの実現に貢献できると考えていますか?
     
    LIXILタイル事業部ー再生原料・不要タイルを利用した商品の開発が可能であれば理想ですが、タイルの意匠を活かして、従来の用途以外での使用も現実的かと考えています。例えば、箸置き、コースター、鍋敷き、廃原料を使用した商品は実現できると思います。
    今回のように廃材をアートとして新しい価値に変換させることは非常に良い取り組みだと感じました。タイルは様々な形状や色、模様、材質が特徴のため、小さなパネルに 自由な感覚で組み合わせて作品づくりをするなど、遊びの中でアート性を養う教育ツールとしても活用できると思います。児童教育への貢献として、教育機関などに寄贈して利用してもらうことも大きな意味でサステナビリティにつながるかもしれません。
     
     
    最後に・・・
    過去、現在、そして未来の環境や社会、人々の暮らしを見据えた時間軸を意識し、アイデアやデザイン、活動を世の中に広げていくことが、事業活動の持続性につながっていくと考えています。LIXIL水まわり・タイル事業100周年の活動は、まさにそれを体現できる絶好のタイミングです。
    LIXILは100年の歴史の中で、陶芸家、建築家、デザイナー、アーティストとの対話を通じて新たな製品提案や文化活動を行ってきました。
    今回のアートへの支援をきっかけにサステナビリティへの意識をより高める機会になれば幸いです。
     
     
    ■LIXILの水まわり・タイル事業100周年について20240906 (10)
    2024年、LIXILの日本国内の水まわり・タイル事業は今年で100周年を迎えます。1924年にINAXの前身となる伊奈製陶を設立以来、新たな暮らしの価値を追求し続け、数々のイノベーションを創出してきました。
    社会環境やニーズが大きく変化する今、そしてこれからの時代に向けて、これまで100年に渡り培ってきた革新的な技術と知見を礎に、お客さまの暮らしの中にある何気ない日々の幸せのために挑戦し続けていきます。
    https://www.lixil.co.jp/lineup/s/water_tile_100th/
     
     
     
     

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