私たちの日々の生活に欠かせない水。
毎日何気なく使っている水は、世界で最も貴重な資源だといえます。しかし、その水がまったく無い、あるいは非常に不足している状況だと、私たちの暮らしはどうなるのでしょうか?
世界では、7億300万人、つまり約10人に1人が清潔な水を利用することができず、世界人口の半数は、少なくとも1年の一部の期間において、深刻な水不足にさらされています。特に顕著な影響が出ているのがヨーロッパです。2024年には、ヨーロッパ全体の人口の3分の1が水不足の影響を受け、12か国では自治体による取水制限措置が講じられました。
実感がわきにくい人もいるかもしれませんが、こうした水不足は今まさに私たちに降りかかっている問題なのです。
LIXILは、水まわり製品を展開する企業として、水不足というグローバルな課題に取り組んでいます。水と共に生きる未来のために、長年培った専門知識と技術を活かし、バリューチェーン全体にわたってサステナビリティを推進し、より少ない資源でも豊かな暮らしができる社会の実現を目指しています。LIXILが展開するGROHEブランドでは、使い捨てプラスチック包装の削減や生産プロセスにおけるCO₂排出量の削減に取り組んでおり、その結果、年間で最大3700万個のプラスチックパッケージの削減につなげています。加えて、生活者の視点に立ち、水を楽しむ喜びを損なうことなく、水とエネルギーの使用量を削減するテクノロジーを開発、提供しています。
私たちは製品開発プロセスにおいて、生活者の声に耳を傾けることを重視しています。真に求められているものは何なのか、水を大切に賢く使うために、何ができるのかを見極めることが、私たちのものづくりを支えています。
昨年末、LIXILでは水の使用に関して、生活者の考え方をより深く理解するため、グローバルな意識調査を実施しました。自身の水使用量について実際にどの程度認識し、水不足の問題に対処するためにどのようなことを実践しているのか、ヨーロッパ、アメリカ、中東の2万人以上を対象に行った調査結果は、目を見張るものでした。ヨーロッパでは、消費者は水不足の問題について非常に強く認識しており、3人に2人が、今後、自分たちの地域で水不足が起こることを懸念しています。そして、大半が、日常生活における節水が極めて重要であると回答し、家庭で水を節約したいと考えているのです。
しかし、ヨーロッパの人たちは実際に自分がどれだけの水を消費しているのか理解しているのでしょうか?
ヨーロッパでは、一日に平均して144リットルの水を消費しています。これは、ほぼバスタブ一杯分の水の量です。しかし、回答者の79%が自分の水消費量はもっと少ないと考えていました。多くの人の回答は25〜50リットルで、実際の水使用量の3分の1です。ポジティブな面に目を向けてみると、半数近くの人が、既に自宅に節水のための機器を設置していると回答しています。さらに、まだ設置していないと回答した人の半分は、今後6か月以内に節水機器を購入する可能性があると回答しています。
では、それ以外の人たちにとって何が節水の障壁となっているのでしょうか?
回答者の意見は分かれています。中には、単に節水に興味がないという人もいます。節水に効果的な機器の設置にコストがかかりすぎると考えていたり、あるいは、そもそもそういった機器を知らないという人もいました。私たち一人ひとりが水の使い方に目を向けることで、日々の生活のなかで水資源を守ることができます。LIXILは水まわりの専門家として、業界全体で、水資源に関する意識啓発や情報の提供、そして、具体的な解決策を提供しています。
普段、当たり前のように使っている水ですが、自分が実際にどれくらいの量の水を使っているのか正しく把握することから、私たちは取り組むことができます。水というかけがえのない資源を未来へとつなげていくために。
Daniela Stawinoga-Carrington LIXIL Europe マーケティング&コミュニケーション リーダー
Stawinoga-Carrington氏はヨーロッパ、米国、中東の2万人以上の消費者を対象に実施した水に関する最新調査「GROHE Water Insights 2025」を主導し、この調査結果はドイツ・フランクフルトで開催されたISHで発表されました。この記事は、Stawinoga-Carrington氏がISHで行った講演の内容をもとにしています。