LIXIL 2023年3月期第4四半期通期決算(IFRS)
全事業で増収なるも、通期では減益
■第4四半期は、価格改定の浸透と原材料費等のコスト上昇の一服で増収増益
■通期では価格改定により増収も、国内外での需要軟化やサプライチェーンの混乱で減益
株式会社 LIXIL(以下 LIXIL)は本日、2023年3月期第4四半期 通期決算(2022年4月ー2023年3月)を発表しました。
LIXIL 社長 兼CEO 瀬戸欣哉のコメント
「2023年3月期第4四半期の3か月では、価格改定の浸透やコスト上昇の一服に加え、海外事業での供給面の制約や在庫調整が解消したことで、増収増益となりました。これまで継続的に推進してきた施策が奏功し、収益性は回復傾向にあります。一方、通期では急激な円安の進行や資材高、供給の制約による影響が強く残るなど厳しい事業環境に直面し、コスト上昇と価格改定の浸透とのタイムラグもあり、減益となりました。
極めて強い逆風を受けた1年でしたが、LIXILではこれを、持続的な成長に向けてより強い事業基盤を整備する機会と捉え、機動的な対策を講じてきました。サプライチェーンや物流の混乱に対しては、製品供給体制の強化によって制約が解消されました。加えて、他社に先んじた迅速な価格改定を推進し、好調なリフォーム需要や環境意識の高まりに対応した環境配慮型製品の拡充を進めています。さらに、事業環境の大きな変化に先んじて対応していくため、経営の基本的方向性を示した『LIXIL Playbook』を更新し、戦略を進化させました。国内外においてビジネスモデルの最適化を図るとともに、環境戦略の事業戦略への統合を進め、新たなコア事業の確立に向けて、成長が見込める新規事業にリソースを投入していきます。
2024年3月期は、コスト高や消費の先行き不透明感が引き続き継続するものの、中東や東南アジアをはじめとする市場向けの販売は好調継続を見込んでいます。持続可能な成長の実現と環境や社会に対するインパクトの両立に向けて、取り組みを加速させてまいります」
◆決算の概要
売上収益
2023 年3月期通期の連結売上収益は、前年比4.7%増の1兆4,960億円となりました。国内事業については、価格改定の浸透に加え、断熱性に優れた高性能窓など、住宅性能や快適性の向上を目的としたリフォーム需要の増加が寄与し、前年より1%増加しました。海外事業では、米国と中国、欧州の一部地域で需要が軟化し、現地通貨ベースでは売上収益は微減となったものの、円安の影響で円貨ベースでは前年比12%の増収となりました。第4四半期(3か月)では、売上収益は前年同期比5.1%増の3,722億円となりました。国内事業は1%増、海外事業は現地通貨ベースでは3.4%増、円貨ベース14%増でした。
事業利益
事業利益は、通期では前年比で391億円減の257億円となりました。原材料費や物流費の高騰などのコスト増、サプライチェーンの混乱の影響を強く受けたのに加え、物価高による販売数量の減少が減益要因となりました。売上総利益率は31.3%と2.8pt低下、事業利益率は1.7%と2.8pt低下しました。販管費は販売活動量の増加及び物流費の上昇等に伴い209億円増えましたが、販管費率は前年と同水準でした。第4四半期でみると、事業利益は47億円で、前年同期から16億円増となり、事業利益率は1.3%と0.4pt改善しました。売上総利益率は31.2%と0.8pt低下、販管費は11億円増加しました。
非継続事業を含む親会社の所有者に帰属する最終利益
最終利益は、事業利益の減少を主因として前年比326億円減の160億円となりました。第4四半期では前年同期比21億円減の50億円でした。
期末配当予想
期末配当予想は1株あたり45円で据え置きました。年間配当金は前年比5円増の90円を予想しています。
2024年3月期通期業績予想
売上収益は、1兆5,300億円、事業利益は400億円の増収増益を計画し、事業利益率は2.6%を見込んでいます。年間配当金は1株あたり90円を予想しています。
事業・地域別の業績
水まわり事業を手がけるLIXIL Water Technology (LWT)の国内事業では、価格改定の実施に加え、中高級価格帯製品やリフォーム商材の売上が増えて売上収益は4,184億円と1.1%の増収となりました。事業利益は、資材・部品価格の上昇の影響を、期中の価格改定と固定費削減でカバーしきれず、事業利益は250億円と前年比で24.8%減、事業利益率は6.0%と前年から2.1pt低下しました。国内のリフォーム向け売上構成比は前年比2.0pt上昇し、49%となりました。
LWTの海外事業の売上収益は、4,969億円と前年比10.8%増となりましたが、米国、中国、欧州一部地域における需要の軟化に伴い、為替の影響を除く現地通貨ベースでは微減となりました。アメリカ地域では金利上昇による需要軟化や、顧客の在庫調整による発注量の減少が響き、現地通貨ベースで前年比4%の減収となりました。欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域では、サプライチェーンの制約は解消し、中東では販売好調が続くも、中欧など欧州の一部地域の需要の減少により、現地通貨ベースの売上収益は前年比1%の微増となりました。中国では、ゼロコロナ政策後の経済活動の回復の遅れを受け、現地通貨ベースで15%の減収となりました。アジア太平洋地域では、ベトナム、インド、タイが増収をけん引し、全販売チャネルにおいて計画を上回る売上伸長を継続するなど、経済活動の回復に伴い販売が好調で、前年比12%の増収でした。海外事業の事業利益は223億円と前年比で48.7%減、事業利益率は4.5%と前年から5.2pt低下しました。
住宅建材事業等を展開するLIXIL Housing Technology(LHT)では、価格改定による効果や、国内のリフォーム向け高性能窓などの販売が好調で、売上収益は5,982億円と前年比2.4%の増収となりました。一方で、新築需要の低迷による販売数量の減少により、価格改定でコスト上昇分を補いきれず、事業利益は194億円と前年比38.9%減、事業利益率は3.2%と前年から2.2pt低下しました。国内のリフォーム向け売上構成比は前年比1.4pt増加し、34%となりました。
◆経営の基本的方向性を示す「LIXIL Playbook」を更新
LIXILでは、2021年に経営の基本的方向性を示した「LIXIL Playbook」を策定し、4つの優先課題に対する取り組みと、それを実現するための基盤の構築を進めてきました。事業環境の変化に対応し、さらなる成長へとつなげるため、「LIXIL Playbook」を進化させました。5つの戦略的優先分野を設定し、変化への対応力を高め、基幹事業のさらなる強靭化を図るとともに、環境課題に対する事業を通じた取り組みを強化し、新たなコア事業の育成に注力します。
インフレーションとサプライチェーンにおける課題への対応
資材や物流費の高騰による影響をふまえ、販売価格の最適化や、素材の変更によるコストダウンとコスト安定の両立を図るとともに、高付加価値の差別化製品へのシフトにより収益性改善を進めます。また、グローバルサプライチェーンが寸断されるリスクに備え、調達先の冗長化や生産のプラットフォーム化といった従来からの施策に加え、地域内における調達、生産体制への移行を進めていきます。
日本事業の最適化と新たな事業成長の追求
日本事業の収益性と機動力を高めるための施策を継続し、従来、水まわりが中心だったリフォームを窓や壁といった断熱改修にまで広げることで、拡大するリフォーム需要の取り込みを強化します。さらに、全製品群に関して環境配慮型の製品や事業を導入し、差別化につなげていきます。
ウォーター事業における海外事業の成長促進
高付加価値製品の販売拡大、販売チャネルの多角化、戦略的なブランド・ポートフォリオの構築といった施策を通じて、コモディティビジネスからの脱却を図り、海外市場の成長を着実に取り込むための基盤を強化します。
環境戦略の事業戦略への統合
LIXILの環境戦略は、「気候変動対策を通じた緩和と適応」、「水の持続可能性を追求」、「資源の循環利用を促進」という3つの重点領域を設定しています。環境戦略を事業戦略に統合し、各領域における中期目標の実現に向けて取り組みを強化しており、持続的成長と地球環境や社会へのインパクト(良い影響)の拡大を目指します。
新たなコア事業の創出
将来の成長に向けて、新たな収益の柱になるようなコア事業の確立を目指し、リソースを投入していきます。
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