持続可能な衛生市場強化のための5つの教訓 -LIXILとUNICEF Make a Splashパートナーシップからの学び

「安全な衛生環境を、世界中の誰もが当たり前に使えるようにするにはどうすればいいのだろう?」―先週、横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD 9、8/20 - 8/22)のパネルディスカッションは、この重要な問いに光を当て、LIXILとUNICEFの「Make a Splash!(MaS!)」パートナーシップから得られた学びを紐解きました。
LIXILのインパクト戦略室リーダー、デイブ・マテオ氏がモデレーターを務めたこのパネルディスカッションには、LIXILのSATO事業リーダーであるエリン・マッカスカー氏、UNICEF東部・南部アフリカ地域事務所代表を務めるエトレヴァ・カディリ氏、そしてLIXILのSATOアフリカ地域リーダーであるサムエル・ランガット氏が登壇し、衛生市場の強化と、SDGs 目標6を達成するための5つの重要な教訓について議論しました。
議論の冒頭では、今すぐ行動を起こすことの重要性が焦点となりました。カディリ氏が「6人に1人がトイレを利用できないという現状を忘れてはなりません」と強調したように、この厳しい現実は、2018年に正式に発足したMaS!パートナーシップがいかに重要であるかを物語っています。UNICEFがもつ現場での知見と、LIXILの衛生製品に関するノウハウを組み合わせ、手頃で安全なソリューションの提供を目指しているこのパートナーシップについて、ランガット氏は、2018年以来、1,630万人の衛生環境の改善に貢献したと、その大きな成果を語りました。
1つめの重要な教訓は、純粋な市場原理のみに頼らないサプライチェーンを構築することの必要性です。特に、支援が行き届きにくい辺境地域(ラストマイル)のコミュニティでは、市場の力だけに頼ることことができません。ランガット氏が指摘したように、「持続可能なシステムがなければ、一過性のものになってしまう」のです。このパートナーシップは、資金調達や政策・制度の整備という障壁にも対応するために進化してきました。
2つめは、官民連携による普及促進の力です。これは、公衆衛生という共通の目標と、民間の販売インセンティブを融合させるアプローチで、持続的な需要を生み出します。例えばケニアでは、地域の保健推進員が不可欠な公衆衛生メッセージを届け、それをLIXILが主導するマスメディアキャンペーンが強力に後押ししています。
3つ目の重要な教訓は、市場の分断を是正することです。サプライチェーンが分断されていると、特に農村部では、製品が必要な人々に届きにくくなります。MaS!プログラムは、地元のビジネスや、地域の保健推進員の活用といった、革新的な流通モデルを模索しています。
4つ目の教訓として挙げられたのは、公的資金の活用です。衛生分野への民間投資が遅れている中、このパートナーシップは、民間セクターの活動を後押しするための的を絞った公的資金の活用がいかに効果的であるかを示しました。これには、既存の公的資金をより効果的に利用するよう提言したり、金融機関が衛生関連の融資商品を提供するよう促すことが含まれます。
最後に、政策における「推進要因」と「阻害要因」を理解することに焦点が当てられました。MaS!パートナーシップは、包括的な市場を育む新たな政策を支援し、制限的な政策の撤廃を提言するなど、政策プロセスに積極的に関与しています。マッカスカー氏が「これは、官民が連携する力の証です」と述べたように、「コミットメントが不可欠なのです」。
MaS!パートナーシップの歩みは、多様なステークホルダーが団結して永続的な変化を生み出し、何百万人もの人々に安全な衛生環境を届ける、示唆に富む事例となっています。
パネリストたちは、衛生環境を改善するために必要なスピードと規模を生み出すためには、エコシステムの構築のような包括的なアプローチが必要である点で一致しました。いかなる組織も単独ではこの問題を解決できないことを認識し、すべての人々にとって永続的で経済的に深く根差したインパクトを確保する、自律的な「衛生経済圏」を構築することへとシフトしなければなりません。
カディリ氏は、「私たちは、共通の価値観を共有するパートナーシップによって初めて、私たちはこれほどの規模を達成することができました」と議論を締めくくりました。
このパートナーシップに関する詳細については、こちらをご覧ください。