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    サステナブル素材が建築の未来を切り拓く 住友林業の社宅「みどりのの庭」が目指す脱炭素社会

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    住友林業株式会社 建築事業部 浦山真吾氏。「みどりのの庭」の設計を担当。

    株式会社LIXIL(以下、LIXIL)は、LIXILのサステナブル素材である循環型低炭素アルミ「PremiAL R100(プレミアル アール100)」と循環型素材「revia(レビア)」の導入事例として新たなストーリーを公開します。

    住友林業株式会社(本社:東京都千代田区、社長:光吉 敏郎、以下住友林業)が茨城県つくば市に設計・施工した社宅「みどりのの庭」。地上6階建て、木造と鉄筋コンクリート(RC)造の平面混構造で、建材としてLIXILが開発したリサイクルアルミ使用比率100%の循環型低炭素アルミ「PremiAL R100」を採用しています。1階テラスの舗装材にも、廃プラスチックに廃木材を融合させた循環型素材「revia」を採用しており、建設時のCO₂排出量(エンボディドカーボン)の削減に大きく貢献しています。住友林業が建築分野で推進する脱炭素の取り組みと、LIXILの製品が生み出した価値と今後の展望について、住友林業 建築事業部の浦山真吾氏に伺います。

    集合住宅や非住宅の分野では、木造化率が低い日本の現状

    ――「みどりのの庭」の概要と目的を教えてください。



    浦山氏:「みどりのの庭」は中央がRC(鉄筋コンクリート)造で、両端が木造という平面混構造の6階建て集合住宅です。本物件を「木造混構造中大規模集合住宅」のモデルケースとして社会に普及させることで、脱炭素社会の実現に結びつけたいと考えています。


    ――「脱炭素社会の実現」ということですが、御社が脱炭素社会の実現に関する取り組みを推進していく理由は何でしょうか?

    浦山氏:地球温暖化の加速が大きな問題になっており、世界各国、各団体などで色々なアクションがなされていますが、住友林業グループは脱炭素社会の実現に向けて、あるべき姿を長期的な事業構想にまとめた2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を掲げ、実現に向けて社員一丸となって動いているところです。我々のバリューチェーンである「ウッドサイクル※1」を回すことで森林のCO₂吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、自社のみならず社会全体の脱炭素に貢献することを目指しています。
    ※1 ウッドサイクル:「森林」「木材」「建築」の3分野で展開する、住友林業の脱炭素事業の柱

     
    ――「非住宅分野での木造化・木質化」を進める理由、また、その建築的・環境的な利点はありますか?

    浦山氏:住宅分野では木造化率が高い水準で推移しておりますが、集合住宅や非住宅の分野では木造化率が非常に低い水準にあるのが現状です。非住宅の分野での木造化・木質化を推進していくことで、建物全体、建築業界全体のライフサイクルカーボン(ホールライフカーボン)※2を大きく低減させることができます。
    ※2 ライフサイクルカーボン:資源採取から廃棄まで、製品の全ライフサイクルにわたるCO₂排出量


    木造化・木質化以外の部分でも脱炭素を

    ――「非住宅分野での木造化・木質化」に関する国内外の評価はどのようなものでしょうか?

    浦山氏:海外では日本よりも非住宅分野の木造化・木質化が進んでいると感じています。文化や気候、地震の頻度など、さまざまな理由があるかと思いますが、ESG投資に向けられる目が国内よりも非常に厳しいことも要因の1つです。そしてその流れは日本国内でも加速すると考えています。国内における非住宅建築の木造化・木質化は、技術者不足の問題、地震の多さによる構造的な難しさ、防耐火の視点での木材利用の難しさ、気候をふまえた維持メンテナンス等の問題があり、非常にハードルが高いのが現状です。住友林業グループは、これまで木に関わってきた知見と技術、新たな研究開発により国内外での非住宅分野の木造化・木質化を推し進めて、脱炭素社会に貢献していきたいと考えています。


    ――今回、「みどりのの庭」にLIXIL製品を採用いただいた理由を教えてください。


    浦山氏:住友林業では中大規模建築のライフサイクルカーボン(ホールライフカーボン)の低減を実現するために、日々取り組んでいます。その中でも非住宅分野の木造化・木質化は最も重要なことの1つであり、脱炭素に大きく貢献できる部分と考えています。一方、建物は木だけで構成されているわけではないので、木造化・木質化以外の部分についても脱炭素の要素を組み込んでいかないといけません。

    非住宅の開口部では多くの場合アルミサッシが採用されています。設計施工者の視点では各種性能の担保がしやすく、ユーザー視点では機能性と快適性に優れ、メンテナンスが比較的容易なので数多く採用されていると認識しています。その一方、建物を建てるときに発生するエンボディドカーボン※3の視点でアルミサッシを見ると、実は多くのCO₂を発生させてしまう部材の一つという側面があります。住友林業グループが目指す、ライフサイクルカーボン(ホールライフカーボン)の少ない非住宅分野の建築を実現させるためには、木造化・木質化以外の建材でもCO₂排出量を減らしていく必要があります。この点において「PremiAL R100」と「revia(レビア)」は選択すべき製品でした。
    ※3 エンボディドカーボン:建物の建設(建材資材の調達から、輸送、施工・建設、修繕、廃棄・リサイクルまで)に際して発生するCO₂排出量。


    ――LIXIL製品の採用により、実際に生まれた価値やポジティブな影響はありますか?

    浦山氏:住友林業は中大規模建築を設計・施工したときに、必ずその建物からどれだけCO2が排出されたのか、どれだけのCO2を固定したのかを算定して数値化しています。それらを蓄積し分析することで、次のプロジェクトでより炭素を減らすことを試みております。「PremiAL R100」と「revia」を使用することで、一般的な製品よりもライフサイクルカーボンを下げることができました。

    今回は住友林業の自社案件ということもあり、設計者・施工者としてだけではなく、建主としての姿勢も示すことになります。その中で「PremiAL R100」を採用したことは、脱炭素社会の実現への貢献を目指す住友林業グループとして社内外にその姿勢をアピールできるポイントになったと感じています。


    環境商材が当たり前になる日を目指して

    ――今後、建築業界のカーボンニュートラリティのために実現したいことは何でしょうか?

    全産業の中で、建築分野におけるCO₂排出量は非常に大きな割合を占めています。この業界でカーボンニュートラリティを目指すためには中大規模建築での木造化・木質化を進めることが大事だと思っています。木の意匠性や環境性能を最大限に活かし、物件に合わせた構法や部材の技術開発と設計手法を融合させ、快適で環境に優しい建築ソリューションを提供することで、建築の木造化・木質化につながると考えています。また、建築業界の職人不足などの課題に対しては、現場作業の合理化に向けた取り組みも進めていきます。


    ――御社が掲げる長期ビジョン「Mission TREEING 2030」の実現に向けて、LIXILへの要望・期待などがあれば教えてください。

    浦山氏:建築分野でCO₂排出量の削減を推進していく中で、LIXILさんは、色々な分野で建材を供給いただいています。住宅・非住宅に関わらず、建築のライフサイクルカーボンを全体的に減らしていける商品の開発、仕組み作りをLIXILさんには期待しております。今後は、さまざまな環境商材がごく当たり前に使われる時代になると考えています。


    ――環境商材が特別なものではなく、一般化するためには何が必要でしょうか?

    浦山氏:まずは技術開発が必要だと考えます。技術革新は必ず環境商材の推進力になるでしょう。もう一点重要なのは、環境商材を開発して世の中に提供する企業と、それらを採用する企業の双方が、環境的な利益だけではなくて経済的な利益が得られるようになることです。これを長期間続けられる仕組み作りが必要です。業界全体としても環境への配慮が求められているので、企業にとって後れを取ることが許されない社会になりつつあると感じています。



    LIXILでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパス(存在意義)の達成に向け、常に新しいことにチャレンジしています。これまでの枠にとらわれない斬新な発想、そしてさまざまなバックグラウンドを持つ従業員の多様な視点や協業者とのコラボレーションから生まれる新たな価値-このようなことを大切にし、イノベーションを創発していくことで暮らしの未来を創造していきます。
    LIXILは今後も、私たちの行動指針LIXIL Behaviorsの一つにある「実験し、学ぶ」企業文化を醸成し、“やってみよう”と仲間が背中を押してくれる環境を整えてまいります。
    https://www.lixil.co.jp/corporate/innovation/

     

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