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    タイル名称統一100周年記念 巡回企画展 「日本のタイル100年――美と用のあゆみ」

    タイル名称統一100周年記念 巡回企画展 「日本のタイル100年――美と用のあゆみ」 サムネイル画像

    「日本のタイル100年――美と用のあゆみ」JAPANESE “TILE”: A Century of Beauty and Utility
    【会期】 2022年4月9日(土)~8月30日(火)
    【会場】 INAXライブミュージアム「土・どろんこ館」 企画展示室
    【企画】 INAXライブミュージアム、多治見市モザイクタイルミュージアム、江戸東京たてもの園
    【監修】 藤森照信 (建築史家、建築家)

    株式会社LIXIL(以下LIXIL)が運営する、土とやきものの魅力を伝える文化施設「INAXライブミュージアム」(所在地:愛知県常滑市)では、2022年4月9日(土)から8月30日(火)まで、タイル名称統一100周年を記念する巡回企画展*「日本のタイル100年――美と用のあゆみ」を開催します。
    ※藤森照信氏監修の下、当館および多治見市モザイクタイルミュージアム、江戸東京たてもの園による3館共同企画で、会場ごとに異なる展示構成で巡回いたします。

    「建物の壁や床を覆う薄板状のやきものは、すべてタイルと呼ぼう」
    1922(大正11)年4月12日、東京・上野での「平和記念東京博覧会」に際して開かれた「全国タイル業者大会」において、陶磁器製の建築材の呼称が「タイル」に統一されました。当時、「敷瓦(しきがわら)」「腰瓦(こしがわら)」「張付煉瓦(はりつけれんが)」「化粧煉瓦(けしょうれんが)」「タイル」など25以上もの名称が混在する不便を解消するための策でした。博覧会の会場にはタイルのさまざまな使い方を提案する特設館が展示され、タイル張りの住空間を大々的にアピールするなど、1922年は日本のタイル史に刻むべき特別な年となりました。

    タイルの起源は、古代エジプト、ピラミッドの地下空間の壁面を装飾したものと考えられています。装飾性だけでなく、高温で焼成するため耐水性や耐火性に優れ、腐食しにくく、汚れを落としやすいなどの機能を持つタイルは、数千年の時を経て世界各地に広まりました。日本では6世紀の仏教伝来と共に渡来した「瓦」が神社仏閣や土蔵などの建築の床や壁に使われ始めます。明治初期、西洋の建築文化が流入すると、タイルやテラコッタが近代的な建築の装飾材として使われ始め、日本のタイルに大きな転換期が訪れます。欧米からの輸入品を手本にタイルの国産化と量産が始まり、大地震や感染症の流行などの経験を経て都市化や生活様式の変化に合わせ独自のタイル文化が花開きます。

    本展では、瓦の伝来に始まる日本のタイル文化を振り返りながら、名称統一を起点とし、近代的な都市や公共空間、身近な生活空間などあらゆる場面で使われてきた日本のタイル100年のあゆみを紹介します。建築を守ると共に心豊かに彩ることができるタイル。タイルの魅力と可能性を再発見するきっかけとなれば幸いです。


    <開催概要>2022031001_14
    タイル名称統一100周年記念 巡回企画展
    「日本のタイル100年――美と用のあゆみ」
    JAPANESE “TILE”: A Century of Beauty and Utility
    【会 期】2022年4月9日(土)~8月30日(火)
    【会 場】INAXライブミュージアム「土・どろんこ館」企画展示室
    【休館日】水曜日(祝日の場合は開館)
    【観覧料】共通入館料にて観覧可 (一般:700円、高・大学生:500円、小・中学生:250円)
    【主 催】INAXライブミュージアム
    【企 画】INAXライブミュージアム、多治見市モザイクタイルミュージアム、江戸東京たてもの園
    【監 修】藤森照信 (建築史家、建築家)
    【展示デザイン】中原崇志、永田耕平[DENBAK-FANO-DESIGN]
    【本展URL】https://livingculture.lixil.com/topics/ilm/clayworks/exhibition/japanesetile/
    *新型コロナウイルス感染症の状況により会期・イベント等、実施内容が変更になる場合があります。公式WEBサイトに掲載の「感染拡大防止対策」をご確認のうえ、ご観覧をお願いします。

    《巡回予定》※会場ごとに展示構成が異なります。詳細は各館ホームページ等でご確認ください。
    多治見市モザイクタイルミュージアム :2022年9月~(予定)
    江戸東京たてもの園 :2023年3月~(予定)

    <展覧会の見どころ>
    ■1章 日本のタイルの源流をさぐる
    6世紀頃、大陸から仏教と共に伝来し、敷瓦、腰瓦やなまこ壁として寺社仏閣や土蔵に使われた「瓦」に始まり、名称統一に至るまでの歴史を、「瓦」「タイル」「煉瓦」「テラコッタ」に分けて紹介します。見どころの一つは、京都・西本願寺の転輪蔵(1677年建立)内部に張られている腰瓦「柿右衛門色絵応龍文陶板」と同種の実物展示です。奉納品としてつくられたため、西本願寺以外に伝世しているものが非常に少なく、間近に見られるまたとない機会です。鮮やかな絵付と勢いのある筆致で描かれた、四隅の唐草文と中央の応龍文を細部にわたってご鑑賞ください。
    *他にもコーナーごとに、実物資料(以下は一部)を写真と共に紹介します。
    「瓦」:印花紋敷瓦(鎌倉時代)
    「タイル」:岩崎久彌邸や三菱一号館の床に使われたものと同文様の英国MINTON社製タイル、英国製タイルのデザインを参考につくられた、初期の国産タイル
    「煉瓦」:長崎造船所小菅修船場跡 捲上機小屋の赤煉瓦(通称、蒟蒻煉瓦)、煉瓦の表面を装飾する目的でつくられた、東京駅の化粧煉瓦(赤タイル)
    「テラコッタ」:欧州で建築を学んだ武田五一が、煉瓦造の京都府立図書館(1909年)外壁に用いた国産のテラコッタ

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    《柿右衛門色絵応龍文陶板》17世紀(25.5cm×23.5cm×5.3cm)所蔵&写真提供:前坂晴天堂 《内閣文庫化粧煉瓦》1911(明治44)年に建てられた内閣文庫は、煉瓦躯体に月山石を組み入れた建築で、2階の外壁仕上げに化粧煉瓦(白タイル)が張られていた。現在は博物館明治村に移築(左約8×13×4cm)INAXライブミュージアム蔵

    ■2章 1922年、タイルに名称を統一
    大正期に入ると、旧来の生活様式を見直し合理的な欧米型の生活に改善する動きが活発になります。西洋風な住宅が提唱され、近代的なタイル張りの水まわりに親しむよう啓蒙がなされます。公衆浴場でも、清掃が容易なタイルの採用が進み、スペイン風邪の流行(1918-21年)による衛生観念の高まりによって衛生素材としてタイルの需要が増加します。需要の拡大とともに取扱い業者も増える中、やきもの建材は由来や使用場所に従って敷瓦、化粧煉瓦など25以上の呼び名で取引されている状況に市場関係者は不便を感じていました。そこで1922年4月12日、東京・上野で開催されていた平和記念東京博覧会に全国のタイル業者が集まり、名称を「タイル」に統一することを決めます。これは、工業製品として規格標準化を進め普及させるための一歩で、タイル業界にとって意義深い出来事でした。
    本章では、名称が統一されるに至った経緯を時代背景とともに紹介するほか、決議がなされた平和記念東京博覧会の敷地図、会場に展示された実験住宅「文化村」の絵葉書と図面、博覧会出品社/者の優秀作品に授与された金牌などを実物展示し、100年前の出来事を振り返ります。

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    平和記念東京博覧会の金牌。出品項目17部、出品人員約7万5千、審査点数約14万のうち960点に金牌が授与された。(径6.3cm)INAXライブミュージアム蔵 東京タイル業組合が出展した「タイル館」。出典:高梨由太郎編集『平和記念東京博覽會畵帖』洪洋社

    ■3章 日本のタイル100年
    本章では、装飾性と実用性を兼ね備えたタイル100年のあゆみを14のトピックスでご紹介します。(以下、一部を見どころとともに紹介)
    (1) 衛生観念の高まりと共に、汚れの付着がわかりやすく落ちやすい白タイルが水まわりに好んで使われた。
    (2) 明治時代後期より、英国などから取り寄せたカタログのデザインを参考につくられ始めた国産のマジョリカタイル。戦前まで中国やインドなど世界中へ輸出された。
    (3) 美術的価値が高いことから「美術タイル」と呼ばれた小森忍、池田泰山のタイル。釉薬技術によりやきものらしさを活かしたタイルは昭和初期を中心に官公庁や百貨店、富裕層の邸宅などに用いられた。
    (4) 戦後、モダニズム建築が主流となる中、形状はシンプルだが装飾性豊かなタイルが数多くつくられた。

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    (1) 各社から発売された白タイル
    右下はタイル裏面
    (2) 英国製の組絵タイル(左、30.4×15.2×1cm、1930年代)を手本に日本のタイルメーカーが制作したもの(右、33.5×35×4cm) (3)小森忍が東京・鳥居坂の岩崎小彌太本邸(1929年竣工)用として、山茶窯(愛知・瀬戸)で制作したタイル。 (4) ホテルオークラ東京(1962年竣工)に使われた三角形外装タイル(24.5×19×14cm)

    (1)-(4) いずれも、INAXライブミュージアム蔵
    特記が無いものはいずれも撮影、梶原敏英

    <関連書籍 発刊のご案内>2022031001_11
    『日本のタイル100年――美と用のあゆみ』

    2022年4月9日先行販売、4月15日発刊予定
    定価:1650円/B5判/全頁カラー/80頁
    企画:INAXライブミュージアム+多治見市モザイクタイルミュージアム+江戸東京たてもの園
    監修:藤森照信 発行:INAXライブミュージアム 発売:株式会社トゥーヴァージンズ

    <関連イベント>
    オンラインシンポジウム「タイルのこれまでとこれから」

    ゲスト:
    ◎藤森 照信(ふじもり・てるのぶ): 建築史家、建築家。東京大学名誉教授、東京都江戸東京博物館館長、多治見市モザイクタイルミュージアム名誉館長
    若林 亮(わかばやし・まこと): 株式会社日建設計 フェロー役員 デザインフェロー
    開催日時:2022年4月12日(火) 15:00-16:30
    開催方法:YouTubeによるオンライン配信
    参加費 :無料《事前申込制》
    主催  :INAXライブミュージアム
    ※お申込み方法等、詳細は下記公式WEBサイトをご覧ください。(申込締切 4月10日(日))
    https://livingculture.lixil.com/topics/ilm/clayworks/exhibition/symposium/

    <ご参考>
    タイル名称統一100周年記念ロゴマーク2022031001_12

    全国タイル工業組合は、2022年4月12日でタイル名称統一100周年となることから、4月12日を「タイルの日」として記念日登録するとともに、記念のロゴマークを制作しました。

     

    ■INAXライブミュージアム概要
    『INAXライブミュージアム』
    所在地:愛知県常滑市奥栄町1-1302022031001_13
    TEL:0569-34-8282
    休館日:水曜日(祝日の場合は開館)、年末年始
    共通入館料:一般:700円、高・大学生:500円、小・中学生:250円
    ホームページ:https://livingculture.lixil.com/ilm/
    LIXIL文化活動Facebook:https://www.facebook.com/LIXIL.culture

    やきもの製品のテクノロジー拠点、愛知県常滑市にLIXILが開設する文化施設。「窯のある広場・資料館」「世界のタイル博物館」「建築陶器のはじまり館」「土・どろんこ館」「陶楽工房」「やきもの工房」の6館から成る“体験・体感型ミュージアム”。
    土からやきものまで、その歴史や文化、美しさや楽しさを伝えています。土と陶の魅力に触れる体験教室や企画展、ワークショップも開催。

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